ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

地域ナンバーワンと全国ナンバーワンなのか、どちらが良いのか。【no.0325】

 小学校の卒業アルバムを見返すことってありますか?

 私は、実家に帰ったときに、年1回くらいじっくり見返してしまう方なんですが、1回見たきり開いたことがないという人や、すでにどこにあるのかわからないから見られない、なんて人もいると思います。私のように、卒業から20年以上経っているのに、毎年見返している人の方がレアなのかもしれませんが。

 自分の卒業アルバムを見返したり、友達の小学校の卒業アルバムを見せてもらったりして気づいたんですが、卒業アルバムのコンテンツで「クラスのなんでもナンバーワン」みたいなのってあるじゃないですか。クラスの同級生ひとりひとりの得意なことを書いていこう、みたいなやつ。あれって、卒業アルバムの鉄板のコンテンツですよね。

 例えば、私の卒業した小学校の6年1組のクラスだと・・末光くんはサッカーがナンバーワン、平石くんは絵を書くのがナンバーワン、岩本くんは走るのがナンバーワン、下田代くんはバスケットボールがナンバーワン、小野沢さんは料理がナンバーワン、池田さんは裁縫がナンバーワン、みたいな。ちょっと良く覚えていないところもあるんですが、だいたいこんな感じでクラスの卒業アルバム委員が決めていったのだと思います。

 それでも、クラスメイトひとりひとりにナンバーワンをつけていくと、次第に煮詰まってきます。「歴史は上原くんの方が詳しいからなぁ」とか、「そういえば、石田くんポートボールで活躍してたね」とか、「下田代くんを習字にすれば、千野くんをバスケットボールにすることができる」とか、あっちゃこっちゃいじくりながら、「ナンバーワン」を仕上げていったのだと思います。

 それでも、小学生の語彙力の少なさか、「うわー、●●さんのナンバーワンが思いつかない!」みたいなのが出てきます。そうなると、「優しさナンバーワン」とか、「我慢ナンバーワン」とか、「どこか苦しいナンバーワン」が出てくることになります。たかだか30人ほどのクラスなんですけどね。もちろん、ナンバーワンがつきやすい子、つきづらい子の是非を言っているわけではないので、悪しからず。

 じゃあ、「クラスのなんでもナンバーワン」を「学年の何でもナンバーワン」にしたらどうなるのか、という話です。私の学年は100人いました。30人ほどのクラスという枠を、100人の学年という枠に広げたときに、果たして「末光くんはサッカーのナンバーワン」でいられるのか、「平石くんは絵を書くナンバーワン」でいられるのか、という話です。では、学校という枠に広げたらどうなのか、練馬区という枠に広げたらどうなのか。東京都という枠なら、関東という枠なら・・そして、日本という枠ならナンバーワンなのか。そんな話です。

 実店舗とネットショップの違いは、これと同じです。実店舗には商圏があります。「クラス」や「学年」という単位のように、ある一定の枠があるからこそ、「地域のナンバーワン」として商売を成長させていくことができるわけです。これに比べ、ネットショップは全国大会です。「日本」という大きな枠の中で、存在意義を見出していかなければいけません。サッカーやバスケットボール、料理、裁縫、習字で「地域のナンバーワン」だったとしても、全国でナンバーワンを取るのは容易ではないと思います。そして、小売りという業態であれば、サッカーやバスケットボールという括りで全国のナンバーワンを取れるのは大資本だけです。中小に勝ち目はありません。

 いつもなら、「だからネットショップは差別性を作らなければならない」みたいな話になるのですが、今日は逆でいきます。ネットショップのセグメンテーションを考えるより、商圏に守られた中でのナンバーワンに力を入れる方が、得策ではないのか。なぜなら、セグメンテーションを狭くすればするほど、差別性は高まりますが、お客様のパイが少なくなるからです。実店舗の方は、夏休み中に考えたいテーマです。

 おわり。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。