ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

あれから、3年。事業を縮小して生き残っている。 【no.0178】

(前回のコラムを読まれていない方は、まずこちらからお読みください)

【前回までのあらすじ】

 アイドル芸能事務所「マイドル」を立ち上げた石田さんは、「メガネ歴女」の人気投票オーディションサイト「マイドル」を立ち上げた。第2のサイトとして「メガネ納言」の立ち上げを決意。サイトを管理者のF次郎くんとのミーティングで、「やりきってもらう」までが仕事だと決意する。F次郎くんと石田さんが始めた毎朝のミーティング続かず、同じ失敗を何度も繰り替えし、時間が過ぎていった。次第にアイドル市場の環境は変化し、マイドルは存続の危機に。「メガネ納言」のサイトを閉鎖し、「メガネ歴女」に一本にリソースを投入することになった・・

*アイドル市場は完全に供給過多に傾いてしまった

 あれから、3年。アイドル芸能事務所「マイドル」のサイト「メガネ歴女」は生き残っている。事業を縮小してなんとか生き残っている。アイドル市場の需要と供給のバランスが変化し、現在では完全に供給過多に傾いてしまっている。そのため、ユーザーのニーズも細分化され、1つのサイトにたくさんのユーザーを集めることが難しくなった。その分、残るのはコアなファンが多いが、全体としてのユーザーのパイの関係上、入ってくる売上も、あのころの半分になった。アイドル市場の中では、何とか生き延びている方だが・・

 F次郎くんは「マイドル」が事業を縮小していく中で会社を辞めてしまった。F次郎くんには、この会社に残り続けたときのキャリアが描けなかったのだろう。やはり、自分の頭で考え自ら実践し自ら検証できる「メガネ納言」のサイトという環境を奪ってしまったことが直接的な引き金になってしまった。あれ以来、F次郎くんは空気のようになってしまった。石田さんに言われたことをやるだけ。仕事のクオリティは十分だったが、結果的には石田さんがF次郎くんの能力を引き出せなかったわけだ。いま、「マイドル」に残っているのは、事務のお姉さん1人である。「メガネ歴女」のサイトは石田さんがひとりで運営している。

*うまくいっている頃には、本当に大切なことに気づかない

 石田さんは、歩いていた。どこで、「マイドル」はおかしくなってしまったのかを考えながら、歩いていた。歩き続けていると海に着いた。どこだ。湘南だ。こんなところまで歩いてきてしまったのか。財布も持ってないし、今日中には帰れないな。石田さんが悔やむのは「メガネ歴女」のサイトの人気があった頃に、F次郎くんを育てきれなかったことだ。B美さんというスターがいて、D菜さんというスター候補がいて、あとは「やる」だけだった。でも、F次郎くんには「やりきらせる」ことができなかった。そのうち、市場が変化してしまい、その波にのまれた。

 「メガネ歴女」のサイトがうまくいっている頃には、そんなことは考えていなかった。自分が仕事でやっていることをそのまま伝えれば人は成長すると思っていたし、「メガネ歴女」「メガネ納言」というように、人を育てて次々と事業の柱を立てていけば、会社は成長していくと思っていた。はっきりいってストーリーはできていた。じゃあ、本当の問題は何だったのか。それはストーリーの問題じゃない。問題は、自分だ。自分自身にある。自分が人を動かせなかったことが、いま自分がここにいる原因だ。石田さんは、やっと気づいた。

 もう遅いのか。もう自分は終わってしまったのか。いや、まだ「メガネ歴女」のサイトが残っている。そして、こんなときも事務のお姉さんが会社で仕事をしてくれている。まずは、会社に戻って、事務のお姉さんに自分の考えをひとつひとつ着実に伝えることから始めよう。「メガネ納言」のサイトは復活できないかもしれないけれど。そのひとつひとつが会社の成長になる。石田さんは会社の方に向かって歩き出しました。

 ざざーん。夕日を映した波しぶきが、石田さんの足を濡らしました。でも石田さんの足は、しっかり地面を掴んでいました。

 おしまい。

注:このシリーズの石田さんは石田麻琴さんとは別人です。実体験でもありませんので、石田麻琴さんのイメージと重ねあわさないようお願いします。あくまでお願いします。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。