ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

「客単価=お客様」。客単価アップの原理原則について考える【no.0855】

 先日の中小機構さんのセミナーでの質問です。

 「客単価アップの良い方法はありませんか?」

 こんな問いをいただきました。今回は「客単価アップ」について考えていきたいと思います。

 一般的な客単価アップの施策として思いつくのが、「アップセル」と「クロスセル」です。ご存じの方も多いと思います。

 「アップセル」は同一系統のグレードの高い商品を用意することで客単価を上げる方法。「いつもスタンダードを買われていますが、より高スペックなプロフェッショナルはどうですか?」というような提案をおこなうことで、客単価アップにつなげていきます。

 「クロスセル」はあわせて購入する商品を用意することで客単価を上げる方法。「ネックレスに合わせて、おそろいのイヤリングはいかがですか?」というような提案をおこなうことで、客単価アップにつなげていきます。

 また、よくある手段として「5,000円購入で送料無料」とか「こちらを買うと送料無料」などの提案で「4,600円の客単価を5,000円に到達させる!」という手法もあります。

 このあたりの「アップセル」「クロスセル」もしくは細かいテクニックについては、他のコンサルの方やセミナー・本で様々アイデア・具体事例が提供されていると思いますので、ぜひそちらをどうぞ。私がお伝えしたいのはそこではないのです。

 「客単価は上げようと思って上がるものではない」というのが私からの回答です。客単価をアップさせるためには、客単価をアップさせる方法を考えるのではありません。ネットショップのブランドを上げるためには何が必要か、を考えるのです。

 なぜなら、客単価というのは「お客様」に他ならないからです。商品の質や価格を理解した上で、そのネットショップで購入することを選択してくれた「お客様」が支払う金額が「客単価」なのです。ですから「客単価=お客様」なのですね。

 ですから、客単価3,000円を客単価6,000円にアップさせたいと思ったとして、商品の価格帯を入れ替えたとしたら、それはネットショップを利用するお客様を「総とっかえ」することになります。お客様の財布の中身は限られているので、客単価はテクニックで「短期的」に上げるようなものではないんですね。

 むしろ、客単価がアップするということがあるとすれば、それは「長期的」な取り組みによってです。

 ネットショップが成長してファンがつくようになってくれば、お客様はネットショップが新しく提案する商品に興味を持ってくれるようになります。ネットショップがお客様に寄るのではなく、お客様がネットショップに寄る段階までブランドが確立したなら、そこで客単価のコントロールができるようになるというわけです。

 ちなみに余談として、それでも私が「実行数値管理表」で「客単価」の項目を毎日取ってもらっている理由です。

 「客単価=お客様」ですから、基本的にネットショップでは日々同じような客単価の数字が並んでいきます。しかし、たまに飛び抜けて客単価が高い日があらわれることがあります。

 価格の高い商品が売れたか、1人のお客様がたくさんの種類を買ったか、1人のお客様が1つの商品をたくさん買ったか、このいずれかかと思います。このとき「どの商品がどんな買われ方をしたか」を知りたいのです。これが、ネットショップが次にお客様に提案できる「潜在需要、潜在ニーズ」である可能性があるんですね。

 それに気づくために毎日「客単価」を取得してもらっています。毎日同じような数字が並びますが、飽きずに毎日取得していないと変化には気づくことができないですからね。

 おわり。

 

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。