ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

おにぎり水産は実店舗とネットショップを合わせた「直販事業部」をつくる【no.0546】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

 おにぎり水産の笹かまぼこ工場に併設されている実店舗「笹かまおにぎり」に入ると、いつものように七海さんと友花里さんが接客をしていました。ふたりは鬼切社長に気づくと、鬼切社長の方を見て「お疲れさまでーす!」と元気よく挨拶をし、またお客様の対応に戻りました。

 今日は平日ということもあり、おにぎり水産の工場見学にくる観光バスが少ない日です。実店舗で買い物をしているお客様の数も、土日祝日と比べるとまばらでした。七海さんと友花里さんのお客様の対応が終わるのを見計らって、鬼切社長はレジに立つふたりに近づきました。

「七海さん、友花里さん、ちょっとネットショップのことで相談があるんだけれども、今日の仕事の後って、少し時間ないかな?」

 七海さんと友花里さんは「鬼切社長、どうしたんだろう?」という感じにふたり一瞬目を合わせましたが、「大丈夫ですよ」と七海さんの方が言いました。「ありがとう。じゃあ、仕事が終わったら社長室にきてください。じゃあ、お仕事よろしくね」そう言って鬼切社長は実店舗を後にしました。

 七海さんと友花里さんがおにぎり水産の社長室を訪れたのは18時半前のことでした。おにぎり水産工場併設の実店舗は平日の営業時間が18時までです。ですから、仕事が終わってから急いで売上を締める作業をして、社長室にきてくれたことになります。鬼切社長は、彼女たちの真面目さに感心をしました。

 社長室のソファーの右側に七海さん、左側に友花里さんが座ると鬼切社長は言いました。

「七海さん、友花里さん、仕事終わりで疲れているところ申し訳ない。おにぎり水産のネットショップについて相談があります。おにぎり水産の笹かまぼこのネットショップなんだけれど、昔ショッピングモールに出店していて、今後の戦略を猪井氏(いいし)先生という方と一緒に考えているのは知っているよね」

 七海さんと友花里さんは鬼切社長の話を真剣に聞いて、ウンウンと頷きました。猪井氏先生との打ち合わせ内容については、毎週月曜日の朝礼で全スタッフに共有しています。当然、実店舗の担当である七海さんと友花里さんも知っているはずでした。

「これからおにぎり水産として、ネットショップに力を入れていきたいと思っている。ショッピングモールに出店していたときは、中途半端にネットショップをやっていて事務の静子さんにも、スタッフのみんなにも迷惑をかけたけれど、それでもやっぱりこれからの時代はインターネットに本気で取り組まなきゃいけないと思ってるんだ。そこで、おにぎり水産に新しく『直販事業』の部署を作りたいと考えている」

 友花里さんが鬼切社長の話を聞いて、頷いてから言いました。

「ネットショップの事業部ではなくて、直販の事業部を作るんですか?」

 七海さんも「なぜ『直販事業』の部署なんだろう」という感じで、友花里さんの方を見ながら頷きました。友花里さんも七海さんの方を見て、「ネットショップ事業部じゃなくてね」と七海さんに向けて呟きました。鬼切社長はこたえました。

「猪井氏先生といろいろ相談して気づいたのだけども、すでに実店舗のお客様とネットショップのお客様を区別する時代ではないと思っている。実店舗でわかっていることをネットショップに活かしていきたいし、ネットショップでわかったことを実店舗に活かせるようにしたい。だから実店舗とネットショップを同じ部署にして『直販事業部』を作りたいんだ」

 七海さんと友花里さんは理解してくれたのか、理解していないのか、まだよくわからないような様子です。そして、友花里さんが続けて聞きました。

「鬼切社長がおっしゃりたいことは何となくわかりました。その『直販事業部』を始めるにあたって、ここに私たちが呼ばれた理由は何ですか?」

 友花里さんの質問に、鬼切社長はひと呼吸して言いました。

「七海さんと友花里さんに、『直販事業部』の立ち上げをお願いしたい」

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。