ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ネットショップの担当者を採用の市場に求めるのは難しい? 【no.0042】

■ネットショップの人材は果たして採用できるのか‥!?

 最近いただくご相談で多いのが、ネットショップの運営業務ができる人を紹介してくれないか、という話だ。先週だけで4~5人の友人・知人から同じような相談を受けた。できればネットショップの店長(運営責任者)、もしくはそれなりに運営スタッフをしていた人ならば、ということだろう。実は、コンサルティングに入っているクライアントさんの経営者からもこの類の相談は多い。いい人いませんかねぇ~、というわけだ。

 しかし、残念ながら採用は難しい。ネットショップの運営責任者を経験していて、さらにある程度の成果を残している人となるとまず無理だ。だから、現状内部にいるスタッフを育成していくか、最低限の経験を持ったネットショップ運営者を採用して、店長のレベルまで引き上げていくしかない、というのが弊社としての答えだ。

 ネットショップの店長、ネットショップのマーケティング経験者、というとどんな人だろうか。下記について、スキルを持っていれば良いし、それでなくてもある程度、概念を理解している人なのではないだろうか。

■これを全部わかっている人なんて、いると思う‥!?

・商品企画、商材開拓の経験がある。取引先とのコミュニケーションが取れ、交渉のポイントを理解している。
・Web制作のスキルがある。HTMLや画像加工のスキルがある。フォトショップやイラストレーター、ドリームウィーバーが使える。
・集客手段を知っている。SEOやリスティング広告、アフィリエイトの原理を理解している。SNSなど流行を押さえている。
・更新、運営業務を理解している。販売戦略のスケジューリングができ、そこから逆算してマーケティングの準備ができる。
・システムを理解している。受注システムの原理を理解している。データベースを触れる。データベースを組むことができる。
・物流の管理ができる。在庫の管理、倉庫の管理、資材の管理、アルバイトのシフト管理などを、運営を見ながら調整ができる。
・カスタマーサポートの経験がある。顧客からの接触から、潜在的な課題を見つけ出し、提案することができる。
・顧客像を設定し、そこに向けた商品の提案や集客方法を実行・検証し続けることができる。
・ネットショップにおける数字を理解し、毎日・週次・月次で数字を検証しながら改善活動をし続けることができる。

 ここまでの人間を採用の市場に求めるのは無理だ。概念だけをしっかり理解している人を求めることさえ難しい。さらに、上記を知っている上で、ある程度の成果を残した人となれば、イーコマース事業を専業とする企業の経営者か、有名ネットショップの右腕的存在しかいない。採用の市場にいるとすれば、上記のポイントのうち、2-3個を知っていれば良い方だと思う。

■やっぱり一番良いのは内部の人間を育てること‥!

 ではなぜ、採用の市場に人材がいないかと考えると、私が考える理由は3つある。

・イーコマース業界の歴史はたかだか10年であるから
・ネットショップ運営企業への就職は、必ずしもキャリアアップにならないから
・ECを理解し、第一線で活躍した人は経営者がそれに準ずる人が多いから

 この3つではないかと。運営スタッフを入れてネットショップ事業を拡大させる、ということ自体がたかだか10年くらいであるため、そもそも採用の市場にパイが少ない。そして、ネットショップ運営者が次のキャリアとして歩むのは、必ずしもネットショップ店長としての次のステージではない。さらに、一線級のプレーヤーは経営者や準ずる人が多く、自ら戦略を立てて実行してきたマーケティング経験者よりも、バイヤーやWeb制作、システム担当としての技術者として経験してきた人間が多い。だから「ネットショップを経験しています」という方でも、「Web制作しかやっていませんでした」とか「ネットショップの広告戦略を担当していました(前職広告代理店です)」みたいな方が多い。ここはやはり、採用側としてEC事業を強化しようと考えている経営者が持っているニーズとは、かなりのズレがある。経営者としては、Web制作とか広告戦略の「判断」ができる人を求めているわけだから。Web制作とか広告戦略を、内製するにしても外注するにしても「何のために」がないと意味ないからね。

 となると、やっぱり一番なのは内部の人間を育てること。二番目が、それなりにやっていた人材を採用して、育成すること。ネットショップ店長として実績も実力もある人を採用しようとするのは諦めましょう。自ら面接で戦略を語りだし提案する、なんて人はEC業界にはまだまだいないはずです。

 さらに一点加えるならば、できればより良いのはやはり内部の人間を育てること。採用して育成するのも良いのですが、内部の人間の方がなんで良いかというと「商品を知っている」から。内部の人間の方がそれを十分に理解しているはずなので、外から採用するよりもお客さんに伝わるものができやすい、と思います。でも、採用した人も企業や商品のことを学んでいくだろうから、あくまで「できやすい」ということで。

 ネットショップを構築して、広告をかけて集客して、でも思うように売れなくて、やっぱり担当者をつけないとダメだな、と気づいた。ここまではいいんだけども、そこで有能な担当者を採用の市場に求めるのは難しいですよ、と。育てた方が、よっぽど早いと思うんです。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。