ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

EC事業の損益分岐点と顧客生涯価値から広告費率を考える。 【no.0127】

*どれくらいの広告費を使えばいいのか

イーコマース事業のみならず、ビジネスをおこなう時に、どれくらいの広告費を使えばいいのかは、大切な課題のひとつだと思います。ごく一部の企業では、湯水のごとく広告費が用意されていて、使いきれないというところもあるでしょうが、多くの企業においては、広告の効果をきっちり検証して、最適化をはかっていかなければいけないわけです

ちなみに、湯水のごとく広告費が用意されている企業の担当者も、必ずしも幸福に仕事ができていることはなくて、ベンチャーキャピタルから「広告費を目いっぱい使って、目いっぱい事業を成長させなさい」みたいな指示が入っていることが多いので、試行錯誤してなんとか使い切らなければいけない、かといって、効果がない広告を選択するわけにはいかない(=効果がでるよう工夫しなければいけない)わけで、それはそれでプレッシャーだったりします。

よく、「広告費(もしくは広告費率)って、どれくらいが適当なんですかね?」みたいなことを聞かれることがあるのですが、「一概に言えません」が答えになってしまいます。取り扱っている商材の原価率だったり、オフィスや人件費などの固定費だったり、サイトや商品ページだけではなく広告画像と広告テキスト作成のスキルやセンスにもよってくるので、返答に困ってしまうんですよね。「コンサルなのにわからないの?」的な反応をされてしまうこともあるんですが、こっちが困ってしまいます。

まあ、「一概には言えない」とはいえ、適正な広告費、広告費率を考えるための方法はあります。いつも書いている私のポリシーでもあるんですが、「地図を持つな、コンパスを持て」的な感じで、適正な広告費・広告費率を考えるための切り口を書いてみたいと思います。

事業全体の損益分岐点から考える切り口

ひとつ目は事業全体の損益分岐点から考える切り口ですね。イーコマース事業であれば、商品原価・ECシステム利用料(出店料、ロイヤリティ、カートに紐づいているアフィリエイト料率など)・固定費・物流費・カード決済料率あたりが主たる経費になると思いますが、売上からこれらを差っ引いて、残った分を広告費にあてるという方法。商品在庫が残ったり、振込未入金が出てしまったりする可能性も含んで、広告費の見積りをした方が良いですね。もちろん、残ったお金をすべて広告に使おう、という意味じゃないですよ。

顧客生涯価値(LIV)から考える切り口

ふたつ目は顧客生涯価値(LIV)から考える切り口です。ネットショップを利用してくれたお客様が平均して何回購入してくれるのか、トータルで使ってもらえる金額はいくらなのかを計算します。そこから算出された数字が、新規顧客ひとりを獲得するために使う広告費になるわけです。この場合、理論的には「ひとりあたりの新規顧客獲得金額」を超えない限りは、広告費をいくら投入しても大丈夫、ということになりますね。あくまで理論的にはですが。

まあ、実際には、広告費を増やして、より広告枠を広げていくと、リピート率は悪化していくのが一般的です。つまり、顧客生涯価値も悪化していくので、たくさん新規のお客様に買ってもらえたけど、いつの間にか収益性は悪化していた、なんてことにもなりえます。損益分岐点から適正な広告費(広告費率)を考えるのも、顧客生涯価値から考えるのも、常に成果を検証して、出稿内容(画像やテキストなど)とリンク先(商品やランディングページなど)を改善していくことが重要になるでしょうね。

改善することによって売上があがれば、その分、プロモーションにかけられる費用が増えるわけですし、コンセプトを明確にすることによって、より長くネットショップに付き合ってもらえるお客様に出会えるはずです。そうすれば、当然、顧客生涯価値は上がるわけですから、こちらもまた新しいプロモーションにチャレンジすることができますよね。

広告自体の判断方法はまた今度。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。