ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

圧倒的な数の「現実」に耐えること。「我慢」の先に成功はある【no.0583】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

 4月1日の大安の日、おにぎり水産の新しいネットショップ「笹かまおにぎり」は、晴れてオープンの日を迎えました。この日、おにぎり水産の全体の朝礼では、新しいEコマース事業部責任者となった七海さんがスタッフ全員の前で挨拶をしました。

「みなさん、おはようございます。今日から正式にEコマース事業部の責任者になった七海です。これまでおにぎり水産の実店舗とネットショップは管理部署が別々でしたが、本日より『おにぎり水産直販事業部』として一緒にスタートしていきます。新しいネットショップ『笹かまおにぎり』は、今日からスタートです。猪井氏(いいし)先生、麻間(あさま)さんに助けていただきながら、自立して売上をつくれるように頑張っていきます。今後、直販事業部からみなさんにお願いすることも多々あると思いますが、ご協力お願いします」

 七海さんが一礼をすると、スタッフから大きな拍手がわき起こりました。鬼切社長はその姿を頼もしくみていました。おにぎり水産のこれからのEコマース事業が良い方向に動いていく予感もしました。そして、Eコマース事業・直販事業を本当の意味で成功させるには、経営者である自分が「どれだけ我慢できるか」それが重要だとも、改めて思いました。

 数日前、鬼切社長の携帯電話に猪井氏先生から電話がかかってきました。猪井氏先生が伝えたのは、これからEコマース事業に取り組んでいくための心得のようなものでした。

「鬼切はん。いよいよおにぎり水産の本格的なEコマース事業がスタートするんじゃけども、これから戦場に打って出るにあたって、鬼切はんの心にしっかり留めてもらいたいことがある」

「わかりました。何でしょうか」。鬼切社長は言いました。

「鬼切はん、いま、Eコマース事業へのやる気はどんなもんじゃ?」。猪井氏先生が聞きます。

「いやー、もう、麻間さんには素敵なサイトを作っていただきましたし、七海さんは積極的に動いてくれてるし、言うことないですよ。今回は必ずネットショップを成功させますよ。やる気は十分です!」。鬼切社長は元気よく答えました。

「おお、そりゃええな。ワシもおにぎり水産のネットショップには期待をしちょる。でもな、鬼切はん、大きな期待を持つ、大きな目標を持つのは当然いいことなんじゃけども、ここから先は『現実』と向き合っていかないかんことになる。しかも『圧倒的』な数の現実とな。鬼切はんがいま思っている期待も目標も、どこかで打ち破られることがあるかもしれん。でもな、それを突破せずに、おにぎり水産のEコマース事業の成功はないんじゃ」

 鬼切社長は、携帯電話越しに頷きながら、低い声で「はい」と言いました。猪井氏先生は、鬼切社長の相づちを聞くと、話を続けました。

「だから、ネットショップを始める前に約束をして欲しいんじゃ。猪井氏事務所と契約している3年間を徹底的に『やり抜く』と。どんな現実にぶち当たっても、Eコマース事業を続ける、諦めないということを約束して欲しいんじゃ。これは、契約なんかじゃない。契約だったら破棄だってできる。これは、ワシと鬼切社長の男の約束じゃ」

 鬼切社長は、猪井氏先生の意思を飲み込み、「わかりました。約束します」とすぐに答えました。

「鬼切はん、それは良かったわ。安心した。あとは前に進むのみじゃ。七海さんをバックアップしてあげてな。成果がすぐに出なくても、『我慢』することが大切じゃ。経営は結局『我慢』じゃぞ。じゃあ、次の打ち合わせを楽しみにしてるわ」

 鬼切社長が「ありがとうございました」と言う間に、猪井氏先生は一方的に電話を切ってしまいました。

 「たしかに、『我慢』が大切だな」。鬼切社長は、我慢しきれず潰してきたこれまでの事業のことを思い出していました。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。