ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

引越し業者ってめちゃくちゃスゲー、営業の裏をみた話。その三【no.0502】

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今ここで引越し業者A社に決めてくれ、ということ?

「うぉー、めちゃくちゃ安いじゃん」と思いつつも、そこはできるだけ表情に出しません。営業さんには「おー、そんな感じですか。思っていたより安いですねぇ」というくらいに気をおさめます。そして頭の中で(明日見積に来るS社はどのくらいの値段?)と気になり始めました。

私「A社さんの見積はわかりました」。「ではすでに明日の朝、アポイントの予約している他社さんの見積を聞いてから、また改めて連絡させていただきますね」。営業さん「わかりました。よろしくご検討ください」。私としてはそれが普通の流れかと思っていました。しかし、A社の営業さんは見積を出した後も立ち去ろうとせず話を続けます。

「引越しのお日にちも近づいていることですし・・この価格はほとんど限界の価格です・・ここから●千円ほど下がってしまうと原価です・・S社さん(この時点で、明日S社が来ることは伝えていた)も同じような見積になると思います・・貴重な明日の午前中の時間を使って同じような見積を取るならば・・」

「つまりは、『今ここでA社に決めてくれ』ということですか?」。そう私が質問すると、「左様です」と返ってきました。

価格以外で営業チャンスがあるとすれば、それは「今」

なるほどそういうことか、と。確かに営業さんとして、「いまここで」の契約が優先順位の第一位だよな、と。引越し業者としてはA社もS社も業務内容としての特別な差別性はないわけですから、価格以外でチャンスがあるとすれば、お客様と対面している『今』であることは間違いないわけです。そして、明日のS社は必ず金額の比較をするはずだ、と。

ここで少し迷いました。

自分が想像していた見積よりも安い金額が出てきたこと。でも、明日の朝のS社の見積でもっと安い金額が出てくる可能性があること。見積に大差がないなら、会う時間がもったいないし面倒なこと。見積に時間を使うなら、仕事に時間を使いたいこと。そして、この営業さんは感じも良く「ここで決めちゃっていいかなー」という気持ちにであること。いろんなことが短い間に頭をよぎりました。

結果、「いまの見積から×千円値引きしてくれたら、いまここでS社さんに見積アポイントの断りの電話を入れますよ」という提案をしました。私の中で、×千円の値引きに加えて、営業さんから引越し業者の話をもっと深く聞かせてもらえたら嬉しいなぁ、というのもありました。営業さんは本部に電話をして「×千円値引きをしていいか」を確認(本当に電話したのか?)。そこで契約が成立しました。

引越し業者の営業見積は、「先手必勝」

「じゃあ、今度は私がS社に電話してアポイントの断りを入れますよ」。そう営業さんに言いましたが、困ったことに前日S社からかかってきた電話番号がわかりません。「あー、S社の電話番号どれだっけ」と私が言っていると、営業さんは「これです。S社の見積専用の電話番号」と自分の携帯電話の画面を差し出してきました。「あー、こういうこと、めちゃくちゃ良くあるんだろうなぁ」と妙に感心をしてしまいました。

引越しの見積って、先手必勝なんですね。とにかく先に見積のアポイントを入れた業者の成約率が高い。だから不動産会社から連絡がきた途端に休日関係なく電話をかけてきたわけです。(もちろん、休日は電話に出られやすいというのもあるでしょうが)。そして、初めにA社が「本日はどうですか?」と提案してきたのも、他社に先んじてイチ早く見積のアポイントを押さえるためだったんですね。ということは、S社は火曜日の朝イチの見積アポイントになったことで、かなり不利な立場になってしまっていたわけです。(私としては、適当にアポイント日時の提案をしただけですが)

それを聞いてピンときました。S社の電話オペレーターさんが言っていた「ひとめぼれ1キロをプレゼント」という提案です。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。