ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

「わからない」ことを詰めても、困るだけです。 【no.0166】

(前回のコラムを読まれていない方は、まずこちらからお読みください)

【前回までのあらすじ】

 アイドル芸能事務所「マイドル」を立ち上げた石田さんは、「メガネ歴女」の人気投票オーディションサイト「マイドル」を立ち上げた。B美さんがヒットし「マイドル」の認知は高まり、新グループ「マイドル」の結成で人気に拍車がかかる。新たなスター候補生D菜さんの登場により、第2のサイトとして「メガネ納言」の立ち上げを決意。しかし、サイトを管理する人の採用で1年間失敗が続き、石田さんは自社で人財を育てる決断をする。採用したF次郎くんは非常に頑張ってはいたが・・

*「わからない」ことを詰めても、良い結果は生まれない

 石田さんはF次郎くんとミーティングを行いました。F次郎くんができるものだと思い込み、今までサポートを怠ってきたのは自分だということがわかっていました。数字が上がっていないことに対して叱るのではなくて、F次郎くんがどのように「メガネ納言」のサイトを運営しているのか、それを聞き出したかったのです。

 当然、F次郎くんも「メガネ納言」の数字が上がっていないのは重々承知しています。F次郎くん自身もそれをわかっていて反省していて、社長である石田さんの表情を伺っているのがなんとなくわかりましたから、ここで改めて数字が上がっていないことを突き詰めても仕方ないのです。怒れば怒るほど、F次郎くんも困ってしまうでしょう。なぜなら、F次郎くんは「なぜ数字が上がらないのかがわからない」のですから。「わからない」ことを詰めても、良い結果は生まれません。「頑張ります」に話が帰結して、ただ終電まで残って仕事をするだけになってしまいます。状況を聞いて、一緒に解決策を考えることが大切です。

*F次郎くんは石田さんが教えたことを忠実に守っていた

 「メガネ納言」のサイトをこれまでどのように運営してきたか。F次郎くんの話を聞いていると、「メガネ歴女」のサイトで研修をしながら伝えたことを忠実に守っているようでした。D菜さんのブログをアップすること、D菜さんの個人ページの写真のバリエーションを増やすこと、「メガネ納言」サイトの回遊性を上げ、D菜さんの個人ページにできるだけアクセスを落としていくこと。石田さんが、「メガネ歴女」のサイトを運営しながら、B美さんをメインにして行ったことと全く同じ業務です。

 「メガネ納言」サイトに行う業務とともに、石田さんが指示したデータもきちんとGoogle Analyticsから取得しているようでした。日々のサイトへのユーザー数・投票数・会員登録数・D菜さんのページのアクセス数といった項目です。石田さんが用意したエクセル表に、F次郎くんが「メガネ納言」のサイトをスタートさせてからのデータをすべて入力していました。おかしいところはひとつもありません。

*飲んで嫌なこと忘れても根本的な解決にはならない

 F次郎くんとしては、石田さんが言ったことは全部やっている、数字もエクセル表に入力している。でも数字が上がらない。だからとにかく頑張って頑張って、毎日23時近くまで会社に残ってD菜さんのページを改善しているのです。もう、何をすればいいのかわからない、でも数字が上がっていないのが不安でとにかく時間だけはかけている(つまり、「頑張ってはいます」)といった状態でした。F次郎くんは、泣きそうな顔になっています。

 石田さんは、F次郎くんが数字を入力したエクセルをじっと見ていました。ただじっと見ていました。そこに何か解決策があると思ったからです。F太郎くんは泣いていました。泣きじゃくっていました。ここでF次郎くんの肩をポンとたたき、「F次郎、頑張ってるな。結果が出るのはもうすぐだ。今から飲みに行くか。近くにいい店があるんだ」といって連れ出し、飲んで嫌なことをすべて忘れるという作戦もありましたが、それでは根本的な解決になりません。

 F次郎くんは泣いている。石田さんはエクセルを見ている。オフィスにF次郎くんのすすり泣く声だけが響いています。そんな状態が5分ほど流れたとき、石田さんはついに口を開きました。

 「F次郎、この3月3日のサイト訪問者数10,000人って何だ?」

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。