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販売促進費、広告宣伝費の考え方。予算はどうとる?どう使う?8【no.0739】

 ネットショップの「販売促進費」について考えるとき、次の2つの考え方から適正な「販促費率と販促予算」を検討すると良いでしょう。

 ひとつは「ネットショップ全体の会計数値から販売促進費を設定する」考え方です。たとえとして、ネットショップで月商1,000万円の売上を達成したときの会計数値を分解していきます。

*商品原価率

 一般的に自社で製造している商品の場合は20%から50%、仕入れて販売している商品の場合は45%から70%が商品原価率の基本ラインになります。今回のケースでは自社で商品を企画・製造しているパターンとして商品原価率を35%と設定します。

*システム利用料

 Eコマースのカートシステムの利用にかかる費用、ショッピングモールに出店している場合の出店料、ロイヤルティ、クレジットカード決済やコンビニ決済にかかる費用が主な項目になります。月商1,000万円のネットショップであれば売上の6%~13%ほどになるのが通常です。ショッピングモールでの出店か独自ドメイン(自社サイト)での出店かによってパーセンテージはかなり変わります。ここは独自ドメインでのネットショップ運営と考えシステム利用料を8%と見積もります。

*物流費

 今回のケースでは販売価格に送料を含まず(つまり送料無料ではなく)お客様から別途送料をいただくとします。お客様からいただいた送料と物流費が相殺されるイメージです。多少足が出てネットショップ側に負担がかかったとしても1%前後と考えます。

*固定費

 母体となるビジネス(主軸事業、メイン事業)で人件費とオフィス賃料を償却していると判断する考え方もあります。Eコマース専業の事業者であれば、人件費もオフィス賃料もインフラ代金も固定費として計算しなければいけません。ここでは母体のビジネスのある事業者がEコマース事業にも取り組んでいると考え、月商1,000万円のネットショップに担当者を3人付けていると計算します。人件費を合計して150万円と考えれば、固定費は15%になります。

 ここまでを計算すると合計で59%、利益が41%残る計算です。この41%から広告宣伝費と販売促進費を計算していきます。細かい判断は販売戦略の志向性です。広告宣伝費をゼロにし販売促進費に使うのも良いですし、バランスよく15%~20%ずつに分けるのも良いでしょう。広告宣伝費、販売促進費をともにゼロにして、利益を残すのも当然アリです。

 ただ販売促進費を考えるために押さえておきたいことがあります。

*販売促進費は商品が売れないと計上されない

 広告宣伝費はネットショップに「お客様を集める」ことが目的です。たとえ集まったお客様からのコンバージョン(注文)がなかったとしてもその分の費用はかかります。もちろん、広告を出稿して「全くお客様が集まらなかった」としても広告宣伝費はかかるわけです。それに対して販売促進費は、実際にお客様が「購入してくれる」ことではじめて計上されます。広告宣伝費とはそもそも性格が異なるわけです。

 また、先に計算した会計数値には「在庫」の概念が抜けています。ネットショップを運営するときのお金の流れは「出ていくお金」「入ってくるお金」そして「滞留するお金」の3つです。この「滞留するお金」こそ「在庫金額」です。在庫金額と在庫の回転率を計算してキャッシュ(現金)に余裕を持たせておいたいところです。

 この部分を計算した上、販売促進費率を仮に20%と設定した場合、月商1,000万円のうちの200万円を販売促進費として「割り振っても良いお金」ということになります。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。