ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

Eコマース事業を成功させるために必要なのは「運用投資」【no.0782】

 ネットショップを運営していくとき、必要になるのが「運用投資」の考え方です。これが、実店舗などのリアルビジネスとは大きく異なる部分ではないでしょうか。

 Eコマース事業は、実店舗(リアルビジネス)に比べて「初期投資」がかかりません。

 実店舗の事業をスタートする場合、店舗を出す場所を探さなくてはいけません。場所を借りる賃料、敷金、礼金を含めるとかなりの金額になります。また、店舗の内装をおこなわなくてはいけません。さらに、店舗に置いておく商品在庫を用意しなければいけません。これらがすべて「初期投資」になります。これらが揃ってはじめて実店舗の事業を始めることができます。

 Eコマース事業の場合、ネットショップの出店費用が多額のお金が必要なわけではありません。多くても数十万円(基本的には50万円以内)を用意すれば、どんなショッピングモールにもネットショップを出店できますし、自社サイトのカートASPを借りることができます。

 ネットショップのデザインとレイアウトも自社内にHTML/CSSのスキルを持っているスタッフがいればコストが抑えられます。HTML/CSS、商品画像、商品動画、商品説明文など、リアルビジネスのスタートに比べれば、自分たちで対応ができることばかりです。外注にネットショップの制作を依頼したとしても、ひな形をつくってもらう程度ならば100万円あれば十分なものをつくってもらえます。

 Eコマースは実店舗に比べて「初期投資」がかかりません。ただ、Eコマースの場合はスタートしてからが異なります。

 Eコマースにひとり専任をつける、実店舗にひとり専任をつける、ともに費用としては同じです。ただ、ショップをオープンしてから売上が立ちやすいのは実店舗(リアルビジネス)の方です。特別人から目につかない立地でなければ、新店舗の存在を知ったお客様がオープンから興味を持って来店してくれます。逆に、ネットショップは華々しくオープンしたとしても全くの「無風」から始まります。

 Eコマースの場合、ネットショップをオープンしてから改善活動を繰り返して売上をあげていかなければいけません。どうすればお客様にネットショップを知ってもらえるか、どんな商品をどんな提案で売ればお客様に興味を持ってもらえるか、日々データを見ながらショップをカイゼンしていくことによって、成功に繋げていくのです。ですから、必然的に「運用投資」が必要になります。

 実際には実店舗には多額の「初期投資」がかかっていますし、お店を運営していくためには1人2人の専任では回しきれません。それなりの「運用コスト」が必要になります。ただ、相当高額な商品や相当マニアックな商品を売らないかぎり、リアルビジネスは売上がゼロになりません。収支は赤字でも、「努力をすればなんとかなりそうだ」感があります。

 しかし、ネットショップの場合は無風からのスタートなので、いくら「初期投資」がかかっていないとはいえ、月次会計としては「運用コスト」分だけ丸々赤字になることも十分にありえます。むしろ、そこからがスタートだといっても良いでしょう。Eコマースは「初期投資」がかからない分、「運用投資」がかかります。

 経営者としては、この「運用投資」が嫌です。お客様が見えないので「努力をすればなんとかなりそうだ」感がいまいち感じられないのも困ります。しかし、Eコマースで成長するためにはこの「運用投資」のフェイズは逃れられません。ここで安易にインターネット広告を使って「運用投資」フェイズを解決しようとすると、より大きなしっぺ返しを食らうことになります。

 「運用投資」が嫌な会社はEコマースでの成功は難しいです。「運用投資」の腹を括れないからこそ、多くの会社がEコマースの「始めたりやめたり」を繰り返すのです。

 おわり。

 

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。