著者:石田 麻琴

できることなら「おぼえている」人と長く付き合いたい【no.1240】

(2017年のECMJコラムリライトです)

 以前、「ご飯をおごったことを覚えていない人間とは一緒に仕事をしない」というような文章を読んで、ひどく共感したことがある。URLは忘れてしまったのだが、こんな内容だった。

 ―――相手が後輩だから、たまたま余裕があったから、などちょっとした理由でご飯をおごることはよくあること。当然、ご飯をおごったからといって相手にその見返りを求めているわけではない。ただ、ご飯をおごられた相手の側が「なんとも思わない」のはちょっと違う。そんな人間とは一緒に仕事をしたくない―――。

 こんな内容でほぼほぼ間違いではなかったと思う。ご飯をおごって「別に気にすんなよ」というのはあくまでおごった側のセリフであって、おごられた側が「そう言ってるし、別に気にしなくていいよね」というのは全然違うし、そう思う人間とは気持ちよく付き合いづらい。

*「弊社までご足労いただいてよろしいですか」

 仕事でこれに近いと思うのは、「弊社までご足労いただいてよろしいですか」というものだ。

 取引先からの紹介だったり、交流会や勉強会で知り合ったり、なんかしらの理由で「会いましょう」ということになる。情報交換かもしれないし、会社紹介かもしれないし、パターンは問わない。アポイントの日時が決まり、最後に「じゃあ、どこで会いますかね」という話になる。

 ここで「弊社にご足労お願いできますか」と普通にいう人がいるのだが、果たしてそれはどうなのだろうか。相手が「弊社でも、御社でも結構です」とか「こちらからお伺いします」と先に伝えているのならば「弊社にご足労お願いします」はおかしくない。ただ、当然のように「弊社にご足労お願いできますか」を先にいうのはどこかおかしくないだろうか。

 移動には時間がかかる。都内であれば片道30分から40分。電車の乗り継ぎによっては片道1時間以上かかるし、車で移動の場合もあると思う。伺う側は移動に時間を使っているのに、呼ぶ側はのうのうとデスクで自分の仕事をしているわけだ。自分の合理性ばかりを考えて、相手のことをあまり考えていない気がする。

*あなたの提案を聞くのに、なぜ私が行くの?

 先日、こんなことがあった。知人の紹介で知り合った方がメールをくれた。「めちゃくちゃ面白いシステムがあるから、ぜひ石田さんに見せたい」と。正直、そのシステムにはあまり興味がなかったのだが、ひとまず会いましょうという話になった。場所は、という話になったのだが・・「私のオフィスに来てください」と言い出したんですね。その方。あなたの提案を聞くのに、なぜ私が行くの?

 かくいう私は、「弊社でも、御社でも結構です」もしくは「こちらからお伺いします」というようにしている。コンサルタントという仕事柄、先方のオフィスに伺った方が学びが多いのだ。さすがに片道1時間以上かかる会社は契約をしていなければ、何度も何度も伺うのは難しいけれども・・。

 「ご飯をおごったことを覚えていない人間とは一緒に仕事をしない」というのもわかるし、「弊社にご足労お願いします」と当然のようにいう人ともあまり仕事をしたくない。また、「ご足労いただいた」ということを覚えていない人とも一緒に仕事をしたいとは思わない。

 最悪なのは、「利他の精神」とか「三方よし」とかをうたっていながら、毎回「弊社にご足労お願いします」をいうような会社だ。まったく理念が徹底されていない。

 相手にご足労いただけば、たくさんのアポイントを詰め込むことができる。交通費もかからないし、仕事もはかどる。合理性としては問題ないかもしれない。ただ、それを相手に要求することで何か大切なものを失ってはいないだろうか。感覚値では、ブランドのある大手企業ほど「ご足労お願いします」が多い気がする。

 はたして、あなたの会社のスタッフは大丈夫だろうか?