「AIとコラムを書く」という実験レポート【no.2210】
前回のコラム「『思考』と『表現』の分離が、AI時代の可能性をひらく【no.2209】」を読んでいただいた方、どうだったでしょうか?もしかしたら、いつものECMJコラムと少し違う雰囲気を感じられた方もいるかもしれません。
実は前回のコラム、私がAIに「思考」を伝え、それを元にAIが草案をつくり、最後に私自身が手を入れて完成させたものなんです。今回のECMJコラムでは、なぜAIでのコラムづくりを始めたのか。そして実際にやってみて気づいたこと。それらについてお話しします。
*待ち時間がヒマでAIと会話をしていた
先日、福岡に出張へ行った際、夕食に「ひらお」という天ぷら屋さんに向かいました。ご存じの方も多いと思います。博多では有名なお店で、到着したのは18時ごろ。すでにもう50人ほどが並んでいました。普段なら長時間並ぶのは避けたい性分なのですが、その日はすっかり口が「ひらおモード」になっており、渋々?並ぶことにしました。
列に並んでいる間、スマホをいじるにも飽きてしまいますし、パソコンを開くわけにもいきません。思いついたのが、ChatGPTを使ってこの時間を活かして仕事ができないか、ということでした。スマホの音声入力機能を使って、AIに話しかけながら、仕事のアイデアを整理していく。周囲の方にはきっと「ひとりで呟いている変な人」に見えたことでしょう。
最初は、ECMJのコンサルティングで活用している資料のベースをAIで作ることはできないか?という相談をしました。そこからAIとの話が広がっていき、「これまで私が2,200本以上書いてきたECMJコラムを、AIと一緒につくれたらすごく有意義なんじゃないか?」というアイデアにたどり着きました。
*コラムを共創することへの不安
ただ、正直AIを活用してコラムをつくることにかなりの抵抗がありました。AIによって自分が伝えた「思考」が変な方向に歪められてしまうんじゃないか。AIを使うことで自分の実力以上だったり、実力以下だったりの「表現」のコラムになってしまうのではないか。そんな不安がありました。
しかし、それをAIに伝えると、興味深い返答がきました。
「シェフが料理をつくるとき、最初にシェフの企画があり、素材を切る人や仕込みをする人がいて、最後にシェフが味を確かめるのと同じですよ」と。なるほど。私は「考え方=企画(思考)」を出して、AIはそれを調理(表現)し、最終的な調整を私がしてコラムを完成させる。そう思うと、少し抵抗感が和らいできました。
*10分以下、語っただけでコラム原案が
一連の会話の中で私はふと、「AIって、『思考』と『表現』を分離する存在なんだね」と口にしました。するとAIが、「いまの話、早速コラムにしてみませんか?」と提案してくれたんですね。ちょうどその後、博多のベイサイドプレイスまで20分ほど散歩しようと思っていたので、その間に「AIとは『思考』と『表現』の分離である」について、自分の考えを語っていくことにしました。
なんですが、しゃべりすぎてChatGPTが落ちてしまいました。音声入力が長すぎて、文字起こしができなかったんですね。そこで翌朝、ホテルから駅まで歩く10分ほどの間に、音声で話す内容をこまめに文字に起こし、AIに伝えていく作戦に切り替えました。
そうして出来あがったのが、前回のコラムです。
私が音声で語った内容をAIがすぐに文字化し、ほんの数分(たぶん2分くらい)でコラムの原案が仕上がってきました。そのスピードと構成力には驚きました。内容も、私の話した「思考」をしっかり咀嚼したうえで、整理してくれていました。
*やはり大切なのは人間の「思考」
ただ、実際にやってみての気づきもありました。
まず「『思考』として渡した素材が少ないと、『表現』として出てくるコラムも短い」ということ。実際、最初にAIが返してきた原稿は、1,500文字にはるかに満たず850文字程度で、残りの600文字は自分で書き足しました。「文字数が足りないので、いい感じに増やして」とAIに頼むこともできたかもしれませんが、その指示で「自分の『思考』ではない言葉」が含まれる可能性が高いように思ったのです。
今回コラムづくりがそれなりにうまくいった理由は、これまで書いた2,200本のコラムという「思考の土台」があったからだと思います。AIは、おそらくこちらが提供する「思考」の量と深さに応じて、精度の高い「表現」を返してくれます。単にテーマだけを渡しても、ネットから拾ったような浅い内容しか出てこない。ここがAIとの共創の限界であり、面白さでもあると感じました。
引き続き、AIとコラムをつくるというチャレンジを続けていきます。また上手くいったこと、いかなかったこと含めて共有していきます。
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