ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

人は、知っていても、できない。 【no.0169】

(前回のコラムを読まれていない方は、まずこちらからお読みください)

【前回までのあらすじ】

 アイドル芸能事務所「マイドル」を立ち上げた石田さんは、「メガネ歴女」の人気投票オーディションサイト「マイドル」を立ち上げた。「マイドル」が生んだスター・B美さんに続く、スター候補生D菜さんの登場により、第2のサイトとして「メガネ納言」の立ち上げを決意。サイトを管理する人として採用したF次郎くんと石田さんは、緊急ミーティングを行うことになった。すすり泣くF次郎くんへの石田さんの質問は・・

「F次郎、この3月3日のサイト訪問者数10,000人って何だ?」

 石田さんはF次郎くんが提出した数枚のエクセルを確認して、1ヵ月以上前のデータに目をつけたのでした。3月3日の「メガネ納言」サイトの訪問者数が10,000人。いつもの訪問者数は5,000人程度ですから、3月3日は倍の訪問者数があったことになります。石田さんは、続けてF次郎くんに質問をしました。

 「あと、この2月14日のサイト訪問者数8,000人って何だ?3月14日もサイト訪問者数が9,000人になっているけど、これって何でだっけ?」

 F次郎くんはオフィスの天井を見上げていました。2月14日、3月3日、3月14日にそれぞれ何があったのかを思い出そうとしていました。3分、4分、5分、時間だけが過ぎていきます。もう1ヵ月以上前のことです。F次郎くんの頭の中に残っているハズがありません。F次郎くんは正直に答えました。

 「わからないです。覚えていないです。2月14日はバレンタインデーですし、3月3日はひな祭りです。3月14日はホワイトデーなので、それぞれサイトでなんかしらのイベントはやったと思うんですが、どんな工夫をしたかははっきり覚えていません」

 そこだ。石田さんは直感しました。

実践とデータのふたつを連動させること

 F次郎くんは、たしかに石田さんが「メガネ歴女」のサイトで実践していたことを忠実に守って業務を行っていました。日々、石田さんに言われたとおりにデータをエクセルに入力していました。そこまでは、スタッフとして十分な働きだったのです。しかし、逆にいえば、言われたことをやりただ漫然とデータを入力していたのです。サイトへの実践とエクセルへのデータ入力が作業として分断されていて、その二つが連動していなかったのでした。

 これは私のミスだ。そうです。これは石田さんのミスです。

 実践することを伝え、データを取得することも伝えた。それだけでF次郎くんが自ら成果を上げていってくれると勘違いしていたのです。石田さんとしては、「原因」と「結果」の話をF次郎くんに理解させたつもりでした。「物事には必ず『原因』と『結果』がある。『メガネ歴女』のサイトであれば、B美さんのブログを追加したり、候補生の写真を増やしたり、紹介文を修正したりするのが『原因』だ。その実践に対しての数字が『結果』だ」と。「原因」と「結果」を毎日みて、何をすればどんな数字が出るのかを日々チェックしてこう、そこから成功への糸口を探っていこう。そう伝えたつもりでした。

 人は、知っていても、できない。できるとわかっていても、やらない。やったとしても、やり続けるのは難しい。F次郎くんは、石田さんの話を聞いて、「原因」と「結果」の構図について知りました。できるようになった気分で、毎日実践して数字を取り続けたわけですが、できてはいなかったのです。「F次郎、この3月3日のサイト訪問者数10,000人って何だ?」このひとつの質問のF次郎くんの反応によって、石田さんはそれを悟りました。これは、「原因」と「結果」を繋げられてないぞと。

 石田さんは自分を恥じました。伝えたつもり、理解させたつもりになっていた自分を恥じました。伝えること理解させることはできたのかもしれません。でも、F次郎くんはできていなかったわけです。「やりきってもらう」までが、自分の仕事であったと心の底から恥じました。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。