ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

価格を5倍にしただけで、なんと簡単に利益率が改善。【no.0411】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

 鬼切社長は商品原価率の計算に続いて、物流費の計算を始めました。これまで想定していた物流費率39%のうち、最も高い比率を占めていたのは配送料金でした。1セット1,000円の笹かまぼこを、年商1億円分売るとなると、年間10万セットを発送することになります。1件あたりの配送料金を300円と設定しても、年間で3,000万円の配送料金です。

「この配送料金がかなりネットショップの運営を圧迫することになりそうなんですよね」

 二子(にこ)社長と検討した数字を振り返りながら、鬼切社長は1セット5,000円での計算をします。猪井氏(いいし)先生は後ろでニコニコと笑っていました。

「1セット5,000円で売るとなると、年商1億円の目標のためには、2万セットを発送する感じですよね。配送料金が同じように300円だとしたら、年間での配送料金は600万円ですね。猪井氏先生!1セット1,000円の頃に比べて、24%も配送料金の比率が削減されました・・

 猪井氏先生は満足気な顔をしていました。鬼切社長には何も言わず、とにかく続けて計算しなさいという素振りを見せました。無言でホワイトボードの方を指差しています。

「次はパートさんの人件費です。ここも、1セット1,000円に比べると、5分の1になるってことですよね?いままで年間で500万円の人件費として計算をしていたので、これが100万円。比率として1%です」

「鬼切はん、ええとこに気づいたな。1セットを5,000円にすることで、経費の多くが5分の1になっていくわけじゃ。価格を上げることでサービスの質も上がるはずじゃから、実際は完全に5分の1にはならなかったとしても、近しい数字にはなるわな。ささ、続けて」

 鬼切社長は、続けて資材費の計算を行いました。こちらも、発送数が5分の1になるので、配送料金と同じように年間400万円を80万円に直しました。3.2%の削減です。商品の保管料については、これまでと同じようにゼロ円ということにしました。

 ここまで、鬼切社長にとっては、驚くような数字が出ています。

「1セット1,000円のときは、商品原価率と物流費率を足した時点で、売上の74%までいっていたんですよ。1セット5,000円の計算だと、商品原価率7%+配送料金6%+人件費1%+資材費0.8%で、合計が・・14.8%じゃないですか。59.2%の削減なんですが・・

 鬼切社長は、別の意味での冷や汗をかきました。「今まで自分は何をやってきたんだ」という気持ちと、「果たしてこんなことが実現するものなのか」という気持ちの両方を持っていました。自分の商売観がどこか根本から変わっていくのを感じました。

「あとは、システム利用料ですね。ここはショッピングモールのロイヤルティもクレジットカードなどの決済手数料も、料率での経費になるので、合計して9%の想定は変わらず、と。そして、最後に固定費(人件費)ですね。ここはきちんと専任を付けて投資をしたいので、年間400万円として4%と・・合計して、先ほどの14.8%とシステム利用料の9%と人件費の4%を足して・・なんと27.8%です!」

 「20%どころか、72.2%も利益が出ます!」。鬼切社長は満面の笑みで猪井氏先生の方を見ました。猪井氏先生は「ほぅ」といった感じでしたが。

「72.2%も余裕が出るなら、52.2%分広告を使っても大丈夫ですね。これなら、『年商1億円、利益2,000万円』の目標が達成できそうな気がしてきました」

 鬼切社長は得意になっていました。まったく計算が合わなかったものが、1セットを5,000円にしたことで、こんなにネットショップの運営が楽になるとは思っていませんでした。

「鬼切はん、まだ実現していないことだからな、完全に捕らぬ狸の皮算用なんじゃけども。1つ、ワシからも意見出させてもらうけども、そのシステム利用料の9%ってあるやんか、それショッピングモールに出店することを前提にしたことじゃろ。ロイヤリティ言うとったし。無くそうか。その5%。おにぎり水産はショッピングモールに出す必要ないと思うわ。システム利用料は4%でいこか」

 「なぜですか?」。鬼切社長はとっさに、猪井氏先生に質問を投げかけました。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。