ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

スタッフが自ら「気づく」ために重要なのは、経営者の「我慢」です【no.0554】

 先日更新したブログ、「『人に知ってもらう仕事』と『人に楽しんでもらう仕事』に同じくらいの時間を費やす」を読まれた弊社のクライアントさんから感想をいただきました。「本当、そうなんですよね。改めて気づかされました」と。

 そのクライアントさんは、元々実店舗を営んでいる会社です。実店舗の商売は、まさに「人に楽しんでもらう仕事」が中心であるといいます。「実店舗がどこに存在しているか」。つまり、「商圏」によってお客様の目に触れる機会が変わります。実店舗の前を通ったお客様に興味を持ってもらい、中に入って店内を見てもらうために、様々な販促を施したり、店舗のデザインやレイアウトを工夫したりするというのです。これは「人に楽しんでもらう仕事」です。

 「でも、やっぱりインターネットで売上をあげるためには『人に知ってもらう仕事』をすることが重要なんですよね」というのです。実店舗の商売をやっていると、どうしても「人に楽しんでもらう仕事」ばかりを考え、実行してしまうのだといいます。「人に知ってもらう仕事」は、インターネットのビジネスに特有なものなのかもしれません。またリアル、ネットに関わらず「商圏」を飛び越すためには「人に知ってもらう仕事」は不可欠でしょう。

 この方は、「改めてそれに気づいてくれた」わけです。ネットショップの担当を最近始めたような方ではありません。もうすでに5年以上、ネットショップの店長を経験され、売上もこの数年で5倍6倍に増やされている方です。このくらいの実績と経験がある方でも、「人に楽しんでもらう仕事」だけではなく、「人に知ってもらう仕事」が必要だと「腹の底から」気づくのに、それ相応の時間がかかるわけです。

 この「腹の底から」というのが重要です。「頭で」わかっていても、「腹の底から」わかっていないと、自分自身の行動には結びつきません。このクライアントさんは、自分自身の体験として腹の底から、「人に知ってもらう仕事」の必要性に気がついてくれたのです。100回伝えて直らなくても、「自分で気づけ」ば何事も一発で直ります。これからより重点的に「人に知ってもらう仕事」に取り組んでいってくれるはずです。

 そして、大切なのはここからです。

 「腹の底から」気づくには、時間がかかります。なぜなら、「頭で」わかっているだけでは、その理解が行動には表れないからです。人に伝えられて知る、人に伝えられてわかることは「理解」でしかありません。「気づく」というのは、自分の実践への振り返りによって起こることです。施策、実践、行動、実行があって初めて、「気づく」ことができるわけです。ですから、1日や2日で「腹の底から」の気づきは到底怒らないのです。

 そうなると、「気づく」まで我慢が必要になるということになります。これはネットショップの担当者だけではありません。実は、本当に我慢をしなくてはいけないのは経営者の方です。お金と時間を投資して、自社のインターネットビジネスの担当者が何かに「気づく」まで、待ち続けなければいけません。担当者に「気づいてもらう」ためには、できるだけ意見をいわず「自己の判断による経験」を積んでもらわねばなりません。まさに「果たして成果はでるのか。出るならばそれはいつなのか」を我慢し続ける仕事です。

 経営者というのはえてして早い成果を欲しがります。特に、創業者経営者はすぐに成果が欲しくてたまらなくなる方が多いです。しかし、自分で「気づく」にはやはり時間がかかります。お金をかければ時間は短くなりますが、「気づき」が弱くなります。先に繋がりません。スタッフが本質に「気づく」ために、もっとも重要なのは「経営者の我慢」なのかもしれません。もちろん、我慢ができなければ、永遠に「気づく=自社だけのノウハウが蓄積する」ことはありません。

 おわり。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。