ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

数字の要因を予測するのに最も簡単な方法は、極端な要因をつくること【no.0584】

 先日のセミナーで、自分自身にとっても非常に学びとなる質問を受けました。折角なので、この場で共有したいと思います。

 数値管理表を毎日付け、毎朝議論をしているが、変化の要因が「イマイチ」わからない。という質問でした。

 この質問をしてくれた彼は、非常に優秀なネットショップのマーケターです。現在、運営しているネットショップも、楽天市場で何度もSOYを獲得している、いわゆる「有名店」です。そんな彼が、弊社のECMJセミナーに参加してくれて以降、セミナーで紹介した「主要数値管理表」を、私が話したとおりにきっちり作成してくれています。

 また、ECチームの個々人に主要数値管理表の作成を指示し、毎朝、前日の数字について議論をしているというのです。さらに、主要数値管理表を自ら進化させ、ネットショップのアクセスについての管理表や受注商品についての管理表を独自に作成していると言います。そちらについても、毎朝エクセルを作成し、主要数値管理表とともにECチームメンバーと議論をしているようですが、その変化の要因が「イマイチ」わからない、と。

 「どうすれば要因がわかるようになりますかね?」という質問です。以下、この回答を書いていきます。当然ながら、必ずしも正解ではありません。私としての意見です。

 まず大前提です。主要数値管理表を始め、成果管理エクセルを作成して予測していく「要因」は正解を見つけるためのものではありません。結果として、正解が見つかる場合もありますが、基本的には成果の「共通項」を見つけていくものです。成果というのは、いつでも要因は「複合的」です。ひとつに絞りきることはできません。なので、その要素を分解して、成果が出ているときの「共通項」を探していくことが大切なのです。

 それを前置きした上でチャレンジして欲しいのは、数値管理表を増やすのではなく、むしろ減らして欲しいということです。確かに、主要数値管理表では「売上」「アクセス数」「受注件数」「転換率」「客単価」の5項目しか確認することができません。アクセス数の管理表を増やし「リピート顧客」「新規顧客」の推移を見たり、さらに深く新規顧客の流入管理表を作成し、どの導線からお客様がアクセスしたか、その変化を見たりするのも良いと思います。

 しかし、管理表を細かくすればするほど、細かい要因に縛られます。あれも、これも、それも、果たして要因はどれだろう、ということになります。さらに、管理表を作成し要因を考えることにも、毎朝1時間以上を費やすことになってしまいます。毎日の分析は15分程度で十分です。まずは主要数値管理表の1つに絞って、大きな項目に響いているクリティカルな要因を探していくのが良いでしょうね。

 大切なのは、より多くの「要因」を作り出すことです。要因というのはアクションのことです。つまり、施策であり、実践です。毎朝1時間も分析に時間を使っているのはもったいない。15分程度で分析は終わらせて、あとの45分間は「要因」を作ることに集中した方が有意義です。

 主要数値管理表の5項目だけを見ていても、数字の変化の要因がわからない。その意見は、半分は正しいですが、半分は間違っています。なぜなら、主要数値管理表から要因が読み取れないということは、主要数値管理表に表れるような「要因」を自ら作れていない、ということになるからです。自分では毎日仕事を変化させ続けていると思っていても、知らず知らずのうちに「自分ができること」の範囲にチャレンジが収まってしまっていることがあります。

 本当に必要なのは、数値管理表を工夫することなのではなく、投げるボールの大きさ・形・方向をもっと振り切った(自分にとっては極端な)ものに変えることなのかもしれません。

 おわり。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。