ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

インターネットビジネスの「成長予測」をするのはナンセンス。【no.0726】

 「うちのWEBサイトって1年後、どれくらいの数字になってますかね?」。よく聞かれることです。

 インターネットビジネスの成長は曲線をえがくように上がっていきます。頑張って頑張っても結果が出ないフェイズを抜けると、加速的に成果が上がっていきます。

 その臨界点がどこにあるのか、いつ臨界点を越えることができるのか。ビジネスの計画を立てる上で非常に気になるところだと思いますが、これを明確にこたえられる人はひとりもいないと思います。というよりも、現状のインターネットの仕組み・特徴を考えれば「こたえるのは無理」です。

 そこにはふたつの理由があります。ひとつは、インターネットには「商圏」が無いから。もうひとつは、インターネットは「お客様」が見えないから。このふたつです。

 リアルビジネスの場合、「商圏」いう概念が存在し、実物としての「お客様」がそこに存在をしています。

 例えば、新しくスーパーを立ち上げ、売上を成長させていこうと考える場合。まずは、「商圏」内にどれくらのお客様がいるかを調べることができます。「商圏」のユーザー数がわかれば、そのシェアによってどれくらいの売上を期待できるかが計算できます。「商圏」から売上目標、来店目標の数字をつくることができるわけです。

 次に、競合の動きを確認します。実際に競合のスーパーに来店してみれば、どれくらいのお客様を獲得しているかがわかります。1日スーパーの前で張っていれば、自社とのシェアの比較をすることもできます。どんな販促にどれくらいお客様が集まっているか、どの食品コーナーにお客様が集まっているか。その「お客様が競合を選択している理由」もわかるはずです。

 「理由」がわかれば、どの部分をどうやって競合をひっくり返し、自社のスーパーにお客様を連れてくるか、という話になります。もちろん、商品の価格やサービス、品揃えでひっくり返せるお客様もいれば、そもそも「競合スーパーの前に住んでいる」などの理由でひっくり返せないお客様もいます。

 リアルビジネスでは、このように「自社のサービスを利用していないお客様」をセグメントして、「ここをひっくり返せば売上●●増」というように計算をすることができます。それがなぜできるかといえば、自社のサービスを利用していないお客様との「距離感」がわかるからです。

 しかし、インターネットには「商圏」はありませんし、「お客様」を見ることができません。

 インターネットビジネスは、自社のWEBサイトにアクセスしたお客様(ユーザー)については、徹底的にデータを取得し、分析することができます。しかし、自社のWEBサイトにアクセスしていないユーザーとの「距離感」を知るための術がありません。競合が「どんな商品を並べているか」はWEBサイトをみれば簡単にわかりますが、リアルビジネスのような「そこにお客様は群がっているのか」はWEBサイトをみただけでは全くわからないのです。

 インターネットビジネスでは、自社のサービスを利用していない(アクセスしていない)お客様との「距離感」がまずわかりません。ですから、半年後、1年後にWEBサイトがどこまで成長しているかを予測することはできません。当てずっぽうだったり、希望的観測だったり、気休めや気合い入れだったりのための「なんちゃって成長予測」なら別です。

 インターネットビジネスの根幹は、「自社のデータを徹底的にみ続ける」ことです。どんどん動いて、どんどん成果を検証していくことで、自社のサービスを利用していないお客様との「距離感」をじわりじわりとチューニングしていくしかありません。

 おわり。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。