著者:石田 麻琴

サイゼリヤの注文端末にみた、システム導入の本質的な課題【no.0499】

あのブログを書いて以降、「石田さん、飲みに行きますか?じゃあ、サイゼリヤっすかね?」ということが多くなりました。私は決して、サイゼリヤが好きなわけではありません。かといって、嫌いなわけでもありません。普通です。

そんなわけで、またサイゼリヤに行ってきました。全国のサイゼリヤの中でも、もっとも客数が多いと噂の秋葉原中央店です。

平日の夜、しかも悪天候だったこともあり、並ぶことなく入店することができました。お客さんの入りも、7割程度という感じです。「銀座店は満員だったのになぁー」と思いましたが、おそらく土日の入りはものスゴイのでしょうね。お客様のうち半分以上が学生(らしき人)で、お酒の消費量が少なそうな印象でした。

そんなこんなで、我々はビールにワイン、食事と、メニューをバシバシ頼んでいったのですが、店員さんが注文を受けている端末が気になりだしました。「もしかして、それってiPhoneですか?」。思わず聞いてしまいます。「そうなんですよ。これで注文を取ってるんです」。「いつからですか?」。「けっこう前からですよ」。若い女性の店員さんとオジサン(我々男3人)はそんな会話をしていました。

ちらっと見た感じだと、非常に見やすく、使いやすそうなインターフェイスをしています。なにより、まだまだ「エアコンのリモコン」のような、旧式の端末を使っている外食チェーンが多い中で、「さすがサイゼリヤだな!」とオジサン一同は関心をしてしまいました。

これまでの端末が通信をしているのは、POSレジです。POSレジに注文実績の情報を集約し、1日に1回本部のサーバーにデータを上げるのが一般的な流れです。お客様の注文内容の計算を行い、売上を管理するのもPOSレジの役目。これも、1日に1回、POSレジ締めをした後に本部のサーバーにデータが上げられる仕組みです。ここはご存じのとおりかと思います。

しかし、iPhoneなどのスマートフォンを注文端末として使うことで、データのやり取りが大きく変わります。店員さんがお客様からの注文を手元の端末に打った途端、注文データはクラウドに上がります。お客様テーブル別の会計情報、注文メニューと配膳(?)メニューの管理、店舗内の在庫情報と倉庫の在庫情報の摺り合わせ、またおそらくサイゼリヤくらいの規模になるとメニューの工場での製造管理の情報までが、すべてクラウド上で繋がっているのだと思います。

こうなると、レジはデータ集計の機能を果たしません。単にお客様と金銭のやりとりをするだけの「金庫」と同じ扱いになります。これも面白いところです。当然、お客様全員がクレジットカードや電子マネーで決済をするようになれば、レジの存在自体が必要なくなります。

さて、これほどまでに便利な端末への移行を、「なぜ他の外食チェーンは行わないのか」。ここが気になるところです。全店舗への端末機器の導入、システムの導入のコストは、企業が「生きるか死ぬか」というほどの費用ではありません。むしろ、クラウドですから、以前よりも導入コストは低くなっているはずです。

私が理由として考えたのは2つです。ひとつは習慣の問題です。便利で効率的だし、データの集計が早い等のメリットはわかっているけれども「新しいものに変えるのは面倒くさい」ということです。システムを導入し、端末を配布し、運用フローを決め、さらに運用できるようにするためのスタッフ教育をしなくてはいけないわけです。それを考えると「ひとまず今のままでいいじゃん」となります。そして、その状態が半永久的に続きます。

もうひとつは、「本当に必要性をわかっている人財がいない」という問題です。システム専門の部隊がいない。マーケティング専門の部隊がいない。システムとマーケティングを繋げられる人財がいない。知識としてだけではなく「腹の底から」必要性に気づいている人財がいれば、少なからず着手をしている時代のはずだと思います。

習慣と人財の壁。どの業界でも言えることかもしれません。外食チェーンの他のお店に行くときも、端末に注目してみたいと思います。

おわり。