ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

「原価率」と「利益率」を考える。後編【no.0656】

 「原価率」と「利益率」を考える。後編です。(前回はこちら

 より儲かる、そしてより在庫リスクが少ないのは、より原価率が低い場合(より利益率が高い場合)ということになります。

「原価率が低く、リピート性があり、ロスにならない」ものが最高

 サービスを作ることを考えれば、最高の状態は「原価率が低く、リピート性があり、ロスにならない」ものです。ネットショップを運営するならば、この状態に近い商材を考える、もしくは自社の商材をこの状態に近づけられないかを考えるのがよいと思います。間違っても、「原価率が高く、リピート性がなく、ロスになってしまう」ものを選ばないことです。

 とはいえ、市場というのは需要と供給のバランスで成り立っているものなので、「原価率が高く、リピート性がなく、ロスになってしまう」商品であったとしても、需要が存在している割に「供給が弱い」ならば、市場の総取りも可能になるわけです。ここは競合の状況にもよりますし、自社のビジネスプランを短期的に考えているのか、それとも中期的か、はたまた長期的か、経営者の志向性によります。まあ、この手の商材であれば、経営者が「好き」でないと、到底続けることはできませんが。

「お金」が使えない分、「時間」と「頭」を使う

 これからネットショップを始めて、ネットショップ単体でも事業化・黒字化を目指していくとすれば、願わくば原価率が20%~30%だと、売上を伸ばすための試行錯誤がしやすいと思います。原価率30%~50%だと、まあまあという感じです。このくらいの原価率だと、「お金」というコストを使っての試行錯誤にチラチラ限界があるので、多少「汗水を流す」仕事の配分を大きくしなくてはいけません。「お金」が使えない分、「時間」と「頭」を使う、ということです。

 原価率が50%~65%となると、商材が限られてきます。「リピート性がなく、ロスになってしまう」商品を扱っているネットショップだとすると、相当厳しい戦いになります。「リピート性があり、ロスにならない」商品で何とか戦えるか否か、といったところでしょうか。原価率65%~80%ともなると、「日本の総代理店」とか「日本ではうちしか取り扱えない権利」とか、商品が強いことに加えて、特定の条件をもっていないと、まず成長は無理だと思います。

 というように、やはり原価率が低いことに越したことはありません。原価率を低くできる、もしくは利益率を高くできる商材はどんな商材かといえば、自社のオリジナル商品でしょう。どこからか商品を仕入れて販売する小売りのスタイルでは、原価率20%~30%を保つのはまず無理です。Eコマースにおいて、商品が作れる会社が圧倒的に有利である点もここにあります。

オリジナル商品をつくれる=他社との「違い(差別性)」を出せる

 自社でオリジナル商品をつくれるということは、他社との「違い(差別性)」を出せるということです。「違い」があれば、自社が原価率(利益率)をコントロールすることができます。他社が1万円で販売しているからといって、自分たちも1万円の販売価格に合わせることはないのです。商品原価2,000円のものを1万円で売れば、原価率は20%です。お客さんが納得して買ってくれるのなら、高い利益率であるのは全く悪いことではありません。(日本人は儲けるのは「悪」みたいなイメージを持っていますが、大切なのは「価値」なのですから)

 原価率と利益率の関係における基本的なビジネスの成長パターンです。ビジネス立ち上げのフェイズでは、原価率と利益率が共に高い状態でスタートします。ある程度ボリュームが出てくると、原価率を低くしていき、利益率をさらに高くしていきます。その利益をプロモーション費用に回して、さらにボリュームを出し、原価率を低くしていきます。そう、この流れの中には、利益率を下げるという選択肢はありません。あくまで大資本ではなく、小さい会社が「ブランド」を作る場合です。

 おわり。

 

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。