ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ソーシャル時代のマーケティングは「三方よし」がヒント。 【no.0100】

■お金ではなく、手間というコストで「三方よし」を考える

 前回のブログで、無賃乗車と「三方よし」について書きました。ちょっとその続きを書かせて下さい。まだ前回のブログを読んでない方は、先にそちらを見てもらえると嬉しいです。で、話としては、無賃乗車とそれを取り締まる鉄道会社のコストバランスを考えると、効率性を優先する「二方よし」(こんな言葉あるのか知らないが)になっちゃうんじゃないの、と。きちんと毎日お金を払っているお客様がその状態を不快に思うのならば、「三方よし」の状態ではないわけだから、鉄道会社は何らかのコストを割いて対策をするべきなんじゃないか、という話でした。もちろん、鉄道会社批判ではなく、「三方よし」のサービスの方がいいよね、という話です。

 やはり、言った以上は具体策を出さねばいけないので、提案したのが、自動改札を二重にして、1つ目から2つ目を突破する間に写真を撮ってしまう。顔認証のシステムを使って、無賃乗車の常習犯を特定する。常習犯の無賃乗降駅のデータから、行動パターンを特定し検挙する。みたいな仕組みを考えました。とはいえ、「おいおい、それだったら『三方よし』にはなるかもしれんが、システム投資が半端じゃないだろう」という話にもなると思います。お金というコストではなくて、時間、もっと言えば「手間」というコストで「三方よし」を考えてみましょう。

■どっちのレストランをリピートしたいか?

 実際にあった話です。とあるレストランAに入ったところ、席が埋まっていたため入口付近のテーブルに通されました。自動ドアが開くたびに寒い風が吹いてくる席です。当然、店員さんもそれを知っていると思います。仕方なく注文して食べていると、次のお客さんがきました。その時には奥の席が空いていたので、そちらに通されました。こちらは寒い思いをして食事をして、後から来た方は暖かい中、食事ができる。まあ、普通っちゃ普通の状態ですよね。たまたま運が悪かったのか、良かったのか、そんなところだと思います。

 さて、他のレストランBです。条件はレストランAとほぼ同じです。レストランAのときと同様、席が埋まっていたため入口付近のテーブルの席になりました。注文して食べていると、テーブルの席が空いたようです。すると店員さんが「奥の席が空きましたので、ご移動なさいますか?」と聞いてくれました。で、まあ、そのときは食事も進んでましたし、「この席でいいっすよ」と答えたんですが、このひと手間が「三方よし」として重要だと思うんですよね。

 ポイントは、「できればお客様はストレスがない席で食事を楽しみたい」ということを店員さんが良く理解しているかだと思うんですが、前者の場合はイマイチで、後者の場合はわかっていたと。声をかけるのは面倒だし、食器も移動しなきゃいけないし、注文伝票書き換えなきゃいけなし、次のお客さんは来ちゃってるしで、運営上の手間はいくらかあるはずだと思いますが、「三方よし」のサービスは実現できていますよね。もちろん、お客さんによっては席を気にしない方もいると思いますが、それはレストラン側が決めることではないですよね。

■地道な努力が拡散につながっていく時代に

 前者と後者、どちらの店にいきたいかと言えば後者のお店だと思います。システム投資で「三方よし」を実現するのはお金がかかることなので、レストランでのひとコマみたいなお金のかからない「三方よし」を書いてみたのですが、いずれにせよ「三方よし」を実現するためには、効率化の壁をブチ破るいくらかの「コスト」が必要なわけです。はっきり言って、面倒くさいことだと思います。でも、その面倒くさいことをしないと、目の前のお客さん1人1人を獲得できないんじゃないかなと思います。弊社取締役の言葉を借りると「詰るところ、『隣の店の1.5倍、汗を流したか』それだけ」です。

 これからのマーケティングは「『第三者』がどう思ったか」それがより重要になってきます。インターネットのビジネスはすでに集客モデルの時代ではありませんから、お客様と自社の「二方よし」のサービスは通用しなくなります。場合によっては炎上する可能性もあるでしょう。逆に、「三方よし」のサービスは付加価値のあるものとしてシェアされ拡散していきます。そう考えると、ソーシャル時代のマーケティングのヒントは「三方よし」にあるのかもしれませんね。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。