ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

亀田三兄弟のスポンサー営業をTBSはどうやってしているのか。【no.0087】

■亀田問題をマーケティング目線で冷静に考えてみる‥!

 長男の興毅が韓国でランキング14位(しかも約11か月ぶりの試合)の選手相手に、ダウンを喫しての疑惑の判定勝ち。次男の大毅は、世界戦で敗れたものの王座からは陥落せず。そして、また長男の興毅が、バンタム級スーパー王者のアンセルモ・モレノとの対戦を逃げたとも思われるベルト返上。最近、話題に事欠かない亀田三兄弟であるが、そこに向けられる一般の意見はすでに人物に対しての感情的なものが多く、本質的な問題からずれているように感じる。そもそも、亀田三兄弟とTBSのマーケティングとを絡めて、冷静に考えてみたい。

 ご存じの通り、亀田プロモーションの試合を放送しているのはTBSである。亀田三兄弟が新宿にある協栄ジムに所属していた時代もTBSが放送をしていた。協栄ジムへの移籍前に所属していたグリーンツダジム時代はどの放送局で放送されてたかはちょっとわからないが、とにかくTBSは亀田三兄弟の試合を、世界タイトルマッチでいえば毎試合、19:00~23:00頃のいわゆるゴールデンタイムに放送し続けている。亀田三兄弟(というか、親父を含めた亀田一家)への感情的な意見は、「TBSもグルである」とかなり前から飛び火しているわけなのだが、それでも試合の放送をやめる気はなさそうだ。なぜなら、スポンサーがついているからである。

 最も大きいのはCMスポンサーだと思うが、スポンサーがついているということは、ある程度視聴率が取れているということである。ちなみに11月に韓国で行われた亀田興毅の試合は関東地区で10.8%。瞬間最高視聴率は16.5%で一時期の勢いからは程遠いものの、未だ優良なコンテンツであることは間違いない。バラエティやドラマと比較すると、スポーツ中継はすでに興業として行われているものを放送するのだから、テレビ局にとってもリスクが少ない。多少、煽り映像などのコンテンツ制作やゲストの招聘が必要にはなるが、テレビ用にタレントや女優・俳優を用意して、撮影・ロケをした上でコケる可能性があるバラエティやドラマに比べれば、はるかに安パイなのである。ここも放送し続けることができる理由だろう。

■実はけっこういる。亀田三兄弟のファン‥!?

 では、亀田三兄弟の試合を見ている人は誰なのか? なんとなく見ているアンチが多いとは思うが、実は亀田三兄弟のファンは結構いる。思い出してみてほしい。亀田三兄弟が世に出てきた2005年、プロボクシング界は冬の時代だった。井岡一翔はまだプロデビューしていなかったし、山中慎介がプロデビューしたのは2006年だ。当然、村田諒太がプロデビューしているわけでもなく、金メダルさえとっていなかった。だから、そのキャラクター性・ストーリー性も手伝って、メディアが彼らに乗っかった。亀田興毅の最初の疑惑の判定といわれたファン・ランダエタ戦でさえ、2006年の8月だ。思い起こせば、亀田三兄弟の登場はずっとずっと昔のことなのである。

 最初は「憎たらしいけど強い」というイメージだったものが、「試合を重ねるたびメッキが剥がれた」というより、勝つことを優先しすぎた結果「進化できなくなってしまった」という表現が正解なのだろうと思う。実力というものは、自らの意欲的な努力だけではく「相手が強い。本気で次は負けるかも‥」という危機感があってこそ、本当のレベルアップをしていくものなのだ。プロボクシングという「相手を選ぶことができる」特殊な環境の中で、たぶんそれを失ってしまったのだと思う。もしかしたらある種、亀田三兄弟は被害者なのかもしれない。だがしかし、これだけ長くやっていると亀田三兄弟へのファンがつく。試合中継の最中にTwitterを見ていると、真剣に応援している人が結構いるのだ。先日の試合でも、知り合いの女性が「ともきー!おめでとう!がんばった!」みたいなツイートをしていて、少し引いた。

 彼らファンにとって、相手が強い弱いや判定の透明性などはどうでもよく、亀田三兄弟のストーリーを楽しんでいるだけなのだろう。おそらく、TBSはすでにそれを狙っていると思うし、もしかしたら亀田一家もそれを十分に理解しているのではないかとすら感じる。だから、実は亀田三兄弟について本気で感情的になって批判している人の方がズレているのである。視聴率が続く限り、このドラマは続いていくのだ。(防衛回数とか4階級制覇とか、記録の話はもういいでしょう。それが可能であるプロボクシングの組織の問題が大きい)

■なんだかんだの亀田依存から解き放たれつつある‥!?

 しかし「もしかしたらもうそろそろ終わるかも」と思うのは、試合を行う会場がどんどん縮小し、試合会場のセットがどんどん貧相になっていっていること。昔は、試合会場に橋とか作ってたの、覚えてる人もいるでしょう。もうひとつは、井岡一翔や山中慎介、村田諒太はもちろん、内山高志や井上尚弥などなど、世界でも通用する選手が出てきていること。冬の時代を亀田三兄弟の話題で乗り切ってきたプロボクシング協会が、「むしろ癌」と大きく舵を切る可能性がある。

 海外のようにペイパービューでのテレビ観戦になればこんなことは起こらないのだろうけど、テレビ局側がスポンサーの方を向いているからこそ可能なマーケティング戦略。たとえ炎上マーケティングでも視聴率は視聴率。TBSの社員が、どうやってスポンサーに営業してるんだろう?ってのが最初に浮かんだ疑問だったんだけど、大方こんな感じなんでしょうかね。これを考えてしまっている時点で、私も罠に嵌っている気がしますが。。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。