ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

多店舗展開に失敗しないためのポイント。【no.0282】

 ネットショップの規模別の課題「月商300万円」のフェイズ。(前回はこちら

 前回のエントリーでは、月商300万円のフェイズの課題として、物流のアウトソーシング化をテーマに説明しました。物量が増えることへの対策だけではなく、在庫管理の対策にもなるという話でした。物流のアウトソーシングとは、商品の発送のアウトソーシングだけではなく、在庫管理のアウトソーシングでもあるということですね。さて、月商300万円のフェイズの課題として、在庫管理の仕組みを整えることができたところで、多店舗展開の話に入っていきましょう。

*多店舗展開とは販売チャネルの拡大

 すでにご存じの方も多いと思いますが、多店舗展開とは、インターネット上での販売チャネルの拡大です。元々、自社サイトだけでネットショップの運営をしていたが、新たに楽天市場やYahoo!ショッピングに出店する。Amazonに出品だけをしていたが、自社サイトと楽天市場に出店する。はたまた、楽天市場に出店しているショップの特定の商材を、楽天市場内に別のネットショップを新しく立ち上げて、そこで販売をする。こんな手段も、多店舗展開に入るかと思います。

 まず前提として、多店舗展開をする場合、在庫管理の仕組みが整っていることが戦略上の前提になります。販売チャネルを増やすごとに、各々のチャネル専用の在庫を抱えることは管理上・資金上難しいと思いますから、在庫を一元的に管理して、各々のチャネルに振り分けていくことが大切になるわけです。もちろん、在庫管理の必要がない、在庫管理の必要性が薄い商材のネットショップはこの対象にはなりません。

 ネットショップで取り扱っている商品が、製品名・タイトル・型番などで探される検索商材の場合、インターネット上に幅広く網の目を張っておき、お客様からのサーチに引っかかる可能性を高くしておいた方が良いので、在庫管理の仕組みがしっかりしているならば、月商300万円のフェイズに入る前から多店舗展開に取り組んで構いません。しかしながら、理想を言うならば、あまり早い段階で多店舗展開という選択肢を取らず、まず1店舗でのマーケティングに集中した方が良いと考えます。

*まずは特定のチャネルをマーケティングする

 自社サイトとショッピングモールの売り方は異なります。ショッピングモールの中でも、楽天市場とYahoo!ショッピングのマーケティングは異なるのです。初めから多店舗展開を行うと、新アイテムや販促企画などウェブサイトの更新、また各々の受注処理に、単純計算で多店舗分の労力がかかります。そうなると、どうしても1店舗あたりにかけるマーケティングの時間が少なくなるのです。結果、どの販売チャネルの特性もわからない、ということが起こります。まずは選択と集中をして、特定のチャネルをマーケティングするところから始めてみる。そこで得たノウハウ、マーケティングのツボは、他のチャネルでも必ず役に立つはずです。

 とはいえ、月商300万円のフェイズ以前に多店舗展開をしたい、むしろ、Eコマース事業のスタートの時点から販売チャネルを複数持ってチャレンジしたい、というところは多いと思います。どうせコンテンツを作るなら、いろいろなところで露出した方がいい、という考えです。選択肢としてそちらを取る場合、成功に繋がりやすくするためのポイントがあります。販売チャネルごとに、責任者を別にすることです。例えば、自社サイト・楽天市場・Yahoo!ショッピングという、3つの販売チャネルでスタートする場合であれば、チャネルそれぞれに販売責任者をつけます。できれば、専任の担当者が理想ですが、最初はそうもいかないでしょう。他の仕事との兼任でも仕方ありません。ただし、1人が1つのチャネルを「徹底的に見続ける」という体制を作った方が、着実にマーケティングのノウハウが蓄積されていきます。

 となるとやはり、多店舗展開を成功させるには、ネットショップの販売責任者、つまり店長の資質を持ったスタッフが社内にいるか、というところがポイントになってきます。月商300万円のフェイズの課題は、バックヤードであり在庫管理であり多店舗展開であり、そのための人財育成ということで、全てが線で繋がっているのです。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。