ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

物流業務を外注から自社に戻すときのリスク。【no.0224】

(前回のブログを読んでいない方は、まずこちらをお読みください)

前々回、前回と、物流業務を自社からアウトソーシングするタイミング、そしてアウトソーシングから自社に戻すタイミングについて書いてきました。物流業務を外注から自社に戻すことのメリットとして、即発送の体制がよりつくりやすいことや、お客様ごとに付加価値を提供できることなどのサービスの自由度を上げましたが、当然アウトソーシングから自社に戻すことによるデメリットも潜んでいるわけです。

物流業務をアウトソーシングから自社に戻すとき大きな課題になるのが、繁忙期と閑散期に必要なリソースの差をいかにして埋めるかです。物流業務の外注業者は、通常ひとつのネットショップだけの業務を請け負っているわけではありません。物流の倉庫の中には、ネットショップだけではなくカタログ通販の会社や、発送のない単に倉庫としてだけ使っている会社、スポットで発送作業をする会社など、様々な会社が存在しています。

アウトソーシングでは、スタッフに対して基本的な持ち場を決めているものの、繁忙期や閑散期に合わせて、流動的にスタッフやモノを動かすことで、作業を効率化しています。特に、12月などの消費が多く動く時期には期間限定のアルバイトを採用したり、派遣社員を雇うなどによって、足りないリソースをカバーしています。物流業務を外注から自社に戻すということは、この手間も自分達で負わなくてはいけないということです。

自社発送のアルバイトの人数、そして商品を保管する倉庫のスペースをどこに合わせておくか。これによって、物流業務にかかるコストが大きく動いていきます。アルバイトの人数を多く抱え過ぎていると、リソースが余ります。アルバイトの人数をある程度抱えた上で、1人1人の出勤日数や出勤時間を短くすると、個々人の勤務希望に合わなくなり、不満が溜まることになります。逆に、アルバイトの人数を最低限に抑えておくと、物量が多くなったときに過剰なストレスがかかってしまい、負担が不満へと変わっていきます。それを解消するためにはヘルプとして社員を派遣しなければならず、結果として物流業務にかかるコストが高くなるということになります。リソースの絶妙なバランスが求められるわけです。

バランスを保つためには、商品の入庫と出庫の計画を立てなくてはいけません。比較的容易なのは、定期購入で商品を販売しているネットショップで、毎月の入庫と出庫・在庫数の予想を簡単に立てることができます。さらに、取り扱っている商品の数が少なければ少ないほど、自社発送のリスクは少なくなります。入庫と出庫の計画を立てるのが難しいのは、商品数が多いネットショップ、繁忙期と閑散期の差が激しいネットショップです。12月は繁忙期で2月は閑散期というように、時期的なもので予測がつけば良いのですが、ショッピングモールのイベントや新作アイテムの当たりハズレによって物量が大きく変わってしまうネットショップは対応がしきれません。

それでも自社独自のサービスを提供し、独自の物流ノウハウを蓄積していきたい場合、ポイントになるのは、フロントヤード(販売側)のスタッフとバックヤード(物流側)のスタッフの情報共有ということになります。新作アイテムの発売やメールマガジンでの紹介、インターネット広告の掲載などのアクションによって物量が決まりますから、まずは販売のスケジュールを細かく共有しておくことが大切です。そして、お客様に向けてのアクションに対しての成果(つまり注文=物量)をデータで残しておくことにより、以後のイーコマース戦略に対する成果の予測を定量的に立てられるようになります。こちらは1つ1つのアクションの成果検証を積み重ねて、自社独自のノウハウにしていくしかありません。

おわり。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。