ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

重要なのは、決めることより、守り続けられるか。【no.0301】

 ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら

「これで、よしっと」

 猪井氏(いいし)先生に指定された金曜日の夕方、鬼切社長は猪井氏先生の事務所のFAX番号を何度も確認して、FAXの送信ボタンを押しました。

 猪井氏先生からの課題、「おにぎり水産ネットショップが大切にしたいこと。目標としたいこと。ありたい姿」について、鬼切社長は10つの文章を書き出しました。

・売上年商1億円。利益2,000万円。

・笹かまぼこのブランド価値を高め、市場を拡大させる。

・笹かまぼこという食べ物だけではなく、その歴史、生産への思いにも興味を持ってもらう。

・いつか一度は、工場見学・実店舗にきてもらえるようにする。

・おにぎり水産、全社としてインターネットに取り組む。

 はじめに鬼切社長が書き出したのは、この5つでしたが、猪井氏先生からFAXの返信をもらってから、この金曜日までに新しい文章を5つ加えました。

・Eコマース事業を通じて、若い人財を登用し、新しい雇用を生み出す。

・外国の方から、日本の食品として、笹かまぼこの名前を挙げてもらえるようにする。

・笹かまぼこに自信を持ち、生産の改善をし続け、一切の値引きをしない。

・笹かまぼこを一気に大量に売ろうとしない。スタッフのみんなに残業をさせない。

・これから何があろうとも、インターネットを続ける。

 この合わせて10つの文章を、鬼切社長はA4のコピー用紙に「おにぎり水産ネットショップ10箇条!」と大きく書いて、猪井氏先生の事務所に送信しました。すると、今回は、猪井氏先生からすぐに返信のFAXがくるのではなく、鬼切社長の携帯電話が鳴りました。液晶画面には、「猪井氏先生」という表示が出ています。

「はい!鬼切です!お疲れさまです!」

「あー、鬼切はん、FAX届きました。お疲れ様でした。一通り全部読ましてもらったけど、けっこう良いこと書いてあるなぁー。前回FAXもらったときよりも、内容、倍くらいに増えとるし・・」

「そうなんですよね。むしろ、猪井氏先生に『提出日までじっくり考えて』と返信いただいた後の方が、いろいろ思いつくことが多くて。すぐに提出を完了させなくてホント良かったです。それで、この10箇条のことなんですが、内容の方はいかがだったでしょうか・・」

「いや、鬼切はん、ワシはな、特に言うことあらへんよ。この10箇条、鬼切はん自身が考えて、決めたことだからな、ワシがとやかく言うことじゃないと思うてる。内容としても、特段に変なこと言うとるとも思わないしな。これが鬼切はんの頭の中にあるんなら、ええんじゃないかな。たまーに、売上年商100億円とか書いてくる人もおるけどな。そういう根拠なく、ただ大きな数字を張ればいい思うてる人には怒ったりするけどな。威勢はいらないんじゃ、と」

「ははは、そうですね・・」

「まあ、重要なのは、これを鬼切はんが決めることじゃなくて、鬼切はんが守り続けられるか、じゃ。そっちの方がはるかに重要じゃで」

「はい。わかります・・」

「そしたら、次の宿題じゃ。宿題は2つある」

 ゴクリ・・鬼切社長はどんな宿題がくるのかと、生唾を飲み込みました。

「1つ目は、鬼切はんがつくったこの10箇条を、全社的に発表すること。朝礼とか、月次の全体会議とか、いくらでも発表する機会があるじゃろ。そこで、1つ1つなんでそうしたかをみんなの前で説明してみぃ。そして、その際、この10箇条をプリントして、スタッフに渡すこと。そして、おにぎり水産の事務所、工場、実店舗の目につくところに、プリントを張っておくこと。もちろん、実店舗はお客さんから見えないところじゃぞ。あと、鬼切はん、あんたは、毎日、この10箇条を社長室で唱和すること。刷り込みじゃ!」

「ははは、はい、わかりました。それで、もう1つは・・」

「おう、自分から聞いてくるなんてヤル気じゃな。10箇条のひとつ目に『売上年商1億円。利益2,000万円』って書いたじゃろ。それ、本当か?その内訳を想定して、ワシに説明してくれ。ワシはネットショップのことはわからんから、自分で調べてみぃや」

「えっ・・!」

 猪井氏先生の電話は、ブチっと切れたのでした。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。