ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

問題は、お客様のタイミングがきたときに自社が頭に浮かぶか、否か。【no.0911】

 毎月、自宅住所にDMを送ってこられるショップがあります。

 全国に展開しているオーダーメイドのスーツ屋さん。私自身、まだこのお店でスーツを購入したことはないのですが、シャツとパンツを購入したときに会員登録をさせてもらいました。このお店が、月に1回、必ずDMを送ってこられます。

 DMの内容は毎月様々です。

 おおまかには、「スーツを買いませんか?」「ワイシャツを買いませんか?」というどちらかの内容なのですが、毎回少し提案の仕方が変わります。今月のDMでは、「ご不要のシャツを1枚500円で下取りします」「ご不要のスーツを1着5,000円で下取りします」「ご不要のジャケットを1着3,000円で下取りします」こんな内容です。「下取りフェアをおこなうので、ぜひ来店されてみてくださいね」というところでしょう。

 スーツ、ジャケット、パンツ、ワイシャツ。このお店にはこれ以外の商品はありません。ですから、毎月、どんな販促企画をおこなうか、どんな割り引きをおこなうか、どんなDMのデザインにするか、喧々諤々と議論が交わされているのだと思います。限られた条件の中で、毎月1つアイデアを決めていくのは簡単なことではありません。

 ましてやDMです。1件、1件、80円程度はコストがかかっていることでしょう。たとえ1万通発送したとしても80万円です。5万通なら400万円のコスト、ということになります。スーツ1着の利益がどれくらいかわかりませんが、数十件の来店がないとコストを回収できない計算です。あくまで費用対効果だけを見れば、そうなります。

 毎月DMを受けている側の私の気持ちです。まったく悪い気分はしません。こちらのDMをいただいたからといって、「このショップに来店しなきゃ」とは思わないですが、スーツやパンツ、ワイシャツが必要になったら、このショップに行こうかなくらいには思います。もしかしたら、次のDMやその次のDMでお得な情報があれば、このショップに行ってしまうかもしれません。ただ、その程度です。

 リアルのアプローチだったら、DM(ダイレクトメール)。ネットのアプローチだったら、メールマガジン。ショップ側からお客様に対して能動的にアプローチができる数少ない手段のひとつです。商売というのは基本的に「受け身」になりがちです。インターネットはその仕組み上、よりインバウンドにならざるをえません。

 この能動的なアプローチについて、「何度も同じ商品を紹介するDMを流したらお客様に迷惑じゃないか」「あまり反応がなかったのでメールマガジンを送るのはやめようか」と思うこともあるでしょうが、全然そんなことはありません。このスーツ屋さんも、毎回内容は同じです。提案している商品も4商品しかありません。ただ、コンバージョンに繋がっていないのは「お客様のタイミングではない」からだけなのです。

 毎月1回、DMがきても、毎週1回、メールマガジンがきても、ほとんどの場合、お客様は気分を害することはありません。「迷惑なのではないか」「邪魔なのではないか」と運営側としては思ってしまうのですが、ポジティブにいえば「悪い気はしていない」、少しネガティブにいえば「そんなことを気にして人生を送っていない」ということになります。

 自社の商品に自信があるならば、どんどん発信をしていって良いのではないでしょうか。所詮(という言い方は変ですが)、お客様はお客様のタイミングでしか商品を購入しません。問題は、「お客様のタイミングがきたときに自社が頭に浮かぶか、否か」ということなのです。DMやメールマガジンは、「選択肢として頭の中に残しておいてもらう」ための武器なのです。

 それにしても毎月DMを送ってくれるこのスーツ屋さん、きっと業績も良いのでしょうね。「継続する」ことは素晴らしいことです。信用に繋がります。

 おわり。

 

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。