ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

「越境EC」トレンドワード化への危惧。海外展開はまず「toB」から。後【no.1026】

 海外展開は、まず「toB」からではなかろうか、という話。(前回はこちら

 なぜお客様が定期的に大量購入をしてくれたのか、お客様自身に聞くと意外な(思ったとおりの?)こたえが返ってきました。「大量に購入して、転売をしている」ということだったんですね。なので、購入アカウントは個人アカウントながら、実際の用途としては「toB」だったわけですね。

 そうすると、次の発想がわいてきます。「もしかしたら、同じように転売のニーズを持っている方、他にもたくさんいるのではないか?」ということです。大量購入をしてくれているお客様はいまのところひとりですが、このひとりを2人3人、5人10人と増やしていく方法はないかと考えたのです。

 と、ここまでがネットから発掘することができた「潜在的な需要」です。ちなみに、「転売目的ではない、純粋なtoCのお客様」はいないわけではありません。ただ、そういったお客様は1件の客単価が2,000円、3,000円ですから、商売としては「転売ニーズ」を狙った方が良い、ということになります。

 「転売ニーズ」をもった海外のお客様の販路を広げるため、どう考えるか。ここに向くのはインターネットの戦略ではなく、リアルの戦略です。空中戦ではなく、地上戦です。マーケティングではなく、営業活動です。1件1件を地道に探さなくてはいけません。

 最初に考えたのは、「いま大量購入をしてくれているお客様に、他のお客様を紹介いただけないか」ということでした。現在のお客様にハブになってもらい、新しいお客様をつないでもらう。ただし、現在のお客様にはもっと購入のメリットがあるようにする。

 私たちはどうやって転売されているのかもわかりません。また、同業の知り合いもいません。ましてや、海外に住んですらいません。我々が「転売ニーズ」に対して、インターネットで「自分たちが想像した」マーケティングを展開するよりも、いまのお客様への営業活動を強化する方に価値があると考えたのです。ここはインターネットの及ばない範囲です。

 また同様に、国内で海外の方に営業活動をする方法はないかと考えました。調べてみると、海外の方が日本国内の拠点にするために使われているシェアオフィスがあることがわかったんですね。繋がることができるチャンスと捉え、自分たちは近くにオフィスがあるので特に必要ないのですが、シェアオフィスをひと部屋、借りることにしました。もちろん、目的としては海外の方と情報交換をするためです。

 現状、これらの営業活動はまだスタートして半年ほどしか経っていません。ですから、明確で発信に値するほどの成果が出ているわけでもありません。ただ、海外展開は「越境EC」ではなく、地道な営業活動にこそチャンスがあるのではないかと考えています。越境ECのサイトが使われる可能性があるとすれば、それは「一度信頼関係を築いた海外の方に、二回目以降に購入してもらうためのサイト」ではないでしょうか。

 自社サイトでさえ、日本人のインターネットユーザーに「その存在を知ってもらうため」苦労をしているのに、海外向けの自社サイト(つまり越境ECサイト)が外国のインターネットユーザーに「より簡単に存在を知ってもらえる」と思っているとすれば、すごく浅はかなことだと思います。

 まずは国内で「知ってもらうための努力」を徹底的におこなうこと。それが越境ECサイトを知ってもらうことにも役立つのではないでしょうか。「越境EC」があまり変な方向にいかないことを祈ります。なむー

 おわり。

 

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。