ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ブランドと資本力と人財。大規模Eコマース・小規模Eコマースのジレンマ【no.0494】

 世の中、あちらが立てばこちらが立たずで、こちらが立てばあちらが立たずで、良い面があれば必ず悪い面もあり、Eコマースもしかりだよなぁ、と思うことがありました。

 大企業のEコマースと中小企業のEコマースのジレンマ、について書いてみたいと思います。

 まずは大企業のEコマース。ブランドがあります。そして、お金があります。システム投資をすることができます。広告費をかけることができます。リスティング広告(PPC広告)やアフィリエイト広告などの、「コンバージョンを目的とした」広告だけではなく、看板広告とかイメージ広告とかイベントとか「ブランディングを目的とした」広告に予算をかけることもできます。

 お金を使ってもいいから、とにかくビジネスとしてのボリュームを出せ!これが大企業のEコマースの考え方です。目先的な収支よりも、大きな画を描くことが求められるのです。

 しかし、大企業のEコマースの環境では、人が育ちづらいことでしょう。なぜなら、ブランド力から資本力まで、ありとあらゆるものが揃っているわけです。自分達で試行錯誤し「工夫」を施すよりも先に、専門の会社にアウトソーシングをする、そんな選択も多いと思います。すでにブランド力がある企業のEコマースと、ブランド力がない企業のEコマースは、まったくもって異なります。

 対比として正解なのかわかりませんが、ブランド力のある企業がEコマースで年商10億円を売るのと、ブランド力のない企業がEコマースで年商1億円を売るのが、どちらがスゴイことなのか。一概に、年商10億円の方とは言えないと思います。

 さて、中小企業のEコマース。ブランド、ありません。お金、ありません。システム投資、できません。広告費もほとんどありません。もし、広告予算をわずかに立てたとしても、「コンバージョンを目的とした」広告に対し、厳密に成果の分析を行いながら予算を消化していきます

 とにかく、重要なのは収支!利益が出ていなければ、明日、会社が無くなってしまう可能性すらあります。

 こんな環境ですから、中小企業のEコマースの環境は人が育ちやすいと言えます。少人数で運営をしている場合が多いですから、ひとりあたりの裁量権が大きいですし、事業の全体を見渡すこともできます。その上、数字の管理がきっちりしているわけですから、自ずと経営感覚が身につきます。業務上の非効率も外注でカバーする予算がないので、自分達で「試行錯誤」しなければいけないのも、人材育成になる理由ですね

 このように考えると、大企業のEコマースも中小企業のEコマースも、良い面も悪い面もあり、どちらが良いとも一概に言えないなぁ、という気持ちになります。大企業はブランド力、資本力はあるけど、人財が育ちづらい。中小企業はブランド力、資本力はないけど、人財は育ちやすい。そんな状態です。

 だとしたら、中小企業のEコマースをやってきた人間を大企業が採用したらどうなるか、という話になります。ここまでの流れとして、一見するとベストな選択のような気もしますが、実際に中小企業でEコマースをやっていた人間が大企業のEコマースに関わっていくと、大企業ならではの組織的なルールに縛られて行動ができなくなってしまうんですね。そんな問題も起こります。

 逆に、大企業のEコマースをやっていた人間が中小企業のEコマースに移った場合。例外を除いて、こちらも失敗をするパターンが多いと聞きます。中小企業の予算感や「自分で実務をして試行錯誤する」感に慣れることができないわけですね。そして、ここに例外があるとすれば「大企業のめちゃくちゃ優秀な人」パターンです。昨今のWEB系の起業家には、このパターンの人が多いかなと思います。

 おわり。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。