ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

「小売り」商売、小売りネットショップの生きる道【no.1665】

(2018年9月のコラムです)

 Eコマースでオリジナル商品を販売しているネットショップに比べ、比較的弱いとされるのが「小売り」のネットショップです。

 いくらかの仕入れの条件があるとしても、他店のネットショップでも取り扱われる可能性がある商品を販売しているため需要が分散します。需要を集約させようとすれば値引きや価格競争、キャンペーンなどを展開しなくてはいけません。利益の一部を削って自社の受注を増やすわけです。

 BtoCをメインとするEコマースの市場は「世界のどこからでも買える」ことがメリットなのですから、そこには「商圏」が存在しません。「小売り」が向くのは商圏のあるビジネスです。商圏がないインターネットの土俵に上がると、その競合の数が何十倍、何百倍に膨れあがってしまいます。これでは勝ち目はありません。

 とはいえです。「小売り」のネットショップが小売りとしての力を上手に発揮できていない部分もあるのではないかと思います。今回のテーマは、「小売り」のネットショップが生き残る道です。

*「需要に応じて変化する」というスタンスを守る

 最初にインターネットにおける「小売り」商売のデメリットばかりを書いてしまいましたが、「小売り」はデメリットばかりではありません。メリットもあります。「小売り」のメリットは、すでに商品に需要があること、もしくは需要がある商品を選べること、選び続けていけることです。

 「小売り」のネットショップには自社オリジナルの商品を販売しているネットショップにはない自由さがあります。メーカーさんから直で、もしくは問屋さんを経由して、自社が販売したい商品を小売りとして販売することができるのです。すでに需要がある商品、これから需要が拡大するだろう商品を選んで、商売のポジションを変え続けていくことができます。

 メーカーさん、問屋さんとの条件の縛りがあって自由に動きづらくなっている「小売り」もたくさんあるようですが、基本的には「需要に応じて変化する」というスタンスを守るべきです。守るべきですし、それを失ってしまえば「小売り」の強みを失ってしまったのと一緒です。「需要に応じて変化する」ための新しい取引先を探し続けることを怠った結果、特定のメーカーさん、問屋さんに縛られてしまっているのかもしれません。脱皮しなくては。

*「お客様の変化」をフィードバックする

 もうひとつの「小売り」のメリットはお客様の声を直接聞くことができることです。ネットショップであれば、お客様からの問い合わせやレビュー、評価、また商品の閲覧・購買のデータを「お客様の変化」として得ることができます。ネットショップではなく実店舗でも、お客様の行動や表情から興味が読み取れるはずです。これはメーカーさんや問屋さんが欲しくても得ることができない情報です。

 ネットショップから得られる定量的なデジタルデータ、実店舗から得られる定性的なアナログデータをメーカーさんや問屋さんに共有し、新しい商品やサービスを一緒になって作っていくのです。あくまで現場でお客様に触れているのは「小売り」です。「お客様の変化」をデータと雰囲気から感じとり、次の販売戦略に活かしていく。その情報をもってメーカーさんや問屋さんを動かしていくことが可能です。

 残念なのは特定のメーカーさんや特定の問屋さんとしか取引をせず、限られた選択肢から売れそうなものを選択し、ただネットショップに並べて販売している「小売り」です。「需要>供給」の時代は良くても、「需要<供給」の時代では生き残ることができません。「小売り」のメリットを充分に理解し、活用してネットショップを伸ばしていきましょう。まだまだやれることがあるはずです。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。