ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ECのデータ活用を身につける【no.2047】

 今回のテーマは「ECのデータ活用を身につける」と「お客様に楽しんでもらう仕事」です。

データ活用とデータ分析の違い

 Eコマース事業を成長させるために欠かせないのが「データ活用」です。ECは気合や勘ではなく、データ活用から理論立てて運営を進めていくものです。ECMJでも「数値管理表」という独自のデータ活用方法について紹介しています。いかなるカタチでもデータを活用してマーケティング活動をおこなっていきましょう。

 データ活用の概念はデータ分析とは異なります。データ分析がデータという「結果」を見ることをメインにしています。これに対して、データ活用は施策や理由などの「原因」をみるのです。EC運営業務における改善施策(内的要因)や市場環境や競合の変化で起こったこと(外的要因)をみるのです。そしてデータという「結果」とその「原因」に紐づけていきます。

 「なんでそれがおこったかがわかれば、どうすればそれがおこるかがわかる」です。「それ」を「売上」に変えてみてください。「なんで売上があがったかがわかれば、どうすれば売上があがるかがわかる」です。

ポイントは「結果」には「原因」があること

 「なんでそれがおこったかがわかれば、どうすればそれがおこるかがわかる」。これはどのような言葉に置き換えても成り立ちます。ポイントは「結果」には「原因」があるということです。そして「原因」を意図的に起こすと、望むような「結果」を起こすこともできる(かもしれない)ということです。もちろん「原因」をはっきり特定できるかはわかりません。自分たちで「原因」を起こせるかもわかりません。「原因」をつかむことができれば「結果」に向けた一歩を踏みだすことができます。

 原因には「内的要因」と「外的要因」の二種類があります。データに効いているのが内的要因なのかそれとも外的要因なのか。ここを整理して、内的要因なのであれば施策のボリュームを増やすか精度を上げる。外的要因であれば対処や対策ができないかを検討しルール化する。これを繰り返していきます。市場は常日頃から変化をしています。データ活用を「時間があるとき」にやるのではなく、毎日繰り返すことが大切です。中小企業EC成功のためには、変化に対応する「スピード」で勝負するしかありません。

 「数値管理表」はデータ活用の運用シートでもあり、また習慣化するためのシートです。最初は慣れませんし面倒かもしれません。しかし地道に継続していけば必ずデータ活用の力はついていきます。

「割り算」のデータは高ければ良いわけではない

 Eコマースの運営業務は多岐にわたります。「やること」を設定しすぎると仕事の量は無限になります。「やらないこと」を設定して、売上につながる仕事に徹底していかなければいけません。意味のないデータについては気にしないことが大切です。

 売上やアクセス数(セッション数)や受注件数といった数値項目は業務の成果として確認をしていきます。しかし、転換率や客単価は、その重要性を整理した方がいいかもしれません。売上・アクセス数・受注件数と転換率・客単価、これらの数値項目の「違い」として思い浮かぶことはあるでしょうか。

 売上・アクセス数・受注件数という数値項目は積み重ねのデータです。対して、転換率・客単価という数値項目は「割り算」のデータです。転換率は「受注件数÷アクセス数」で計算ができます。客単価は「売上÷受注件数」で計算することができます。「割り算」で計算するデータの難しさは、「分母と分子で結果の数字が変わる」ことです。

 積み重ねの数値項目は、その数字が高ければ高いほど良いはずです。売上の数字もアクセス数の数字も受注件数の数字も高ければ高い方が良い。ただ転換率や客単価は一概に高ければ高いほど良いとは言えません。

あまり気にしない方が良い「割り算」項目も

 たとえば転換率(コンバージョン率)が5%のショップと2%のショップがあるとします。数字だけをみると5%のショップの方が良いという話になるかもしれません。しかし「受注件数÷アクセス数」の割り算で、前者が「20件÷400」後者が「50件÷2,500」だった場合どうでしょう。前者の転換率5%のネットショップよりも、後者の転換率2%のネットショップの方が受注件数もアクセス数も多いので「良い」と考えられませんか。

 転換率5%のネットショップは平均の客単価が1万円、転換率2%のネットショップは平均の客単価が2,000円だとしたら、話はどうなるでしょうか。前者の売上は「1万円×20件=20万円」後者は「2,000円×50件=10万円」です。実は前者の方がアクセス数も受注件数も低いけれど、売上は多いのです。転換率・客単価は「分母と分子の動きで結果の数字が変わる」ので侮れません。

 ECのマーケティングの指標として転換率や客単価は売上・アクセス数・受注件数に比べると重要度は若干低くなります。巷でいわれているほど重要度が高くない項目は「離脱率」や「直帰率」です。これらは「割り算」で計算する項目である上に、対策への評価がしづらいのが難点です。Eコマース初期の段階ではあまり気にしない方が良いと思います。

「お客様に楽しんでもらう仕事」はふたつ

 Eコマースのマーケティングの仕事は「お客様に知ってもらうための仕事」と「お客様に楽しんでもらう仕事」のふたつに大別されます。このふたつの仕事を両輪で回していくことでEコマース事業が成長します。

 新規顧客の獲得だけで収益モデルが成り立つビジネスは極小です。不動産や生命保険など、一度の契約で売上と利益が確保できるビジネスは限らます。ほとんどは「新規顧客にリピートしてもらう」ことで収益モデルが成り立ちます。Eコマース事業においても例外ではありません。「いかにお客様に知ってもらうか」と同時に「いかにお客様に楽しんでもらうか」で収益モデルが完成するわけですね。(考えてみれば、生命保険も持続的なリピート契約みたいなものですね)

 Eコマースにおいて「お客様に楽しんでもらう仕事」はふたつしかありません。ひとつは「商品」です。そしてもうひとつは「販促」です。このふたつを実践し、仮説検証を繰り返せばお客様に楽しんでもらえるショップに成長することができます。

お客様は「商品を買いにきている」

 まず「商品」です。お客様はネットショップに「商品を買いにきている」わけです。決済方法や配送方法を増やす。UI/UXを改善する。様々ネットショップのマーケティング手法があふれています。しかしEコマース事業の成長に最も効くのは「新商品を発売する」ことです。なぜならばお客様は商品を探し、商品を買いにきているのです。新商品はスケジュールを組んで定期的に発売する、ここを抜かしてはいけません。

 新商品と同時に大切なのは旧作の「売れ筋商品」「定番商品」の在庫を切らさないこと。横縦の展開を広げていくことです。ECで売れ筋商品と定番商品は「売上の軸」であるのと同時に「導線の軸」です。売れ筋商品や定番商品の在庫を切らしたり、陳腐化させたりすることは「売上以上の何か=新商品をみてもらえる可能性など」を失うことになりかねません。

販促で「いま買う理由」をつくる

 もうひとつが「販促」です。新商品を次々発売できないネットショップもあるでしょう。その場合、季節性やトレンドに合わせた販促企画をおこなってお客様を刺激していきます。「商品力×提案力×集客力」の、「販促=提案のひとつ」といっても過言ではありません。季節性やトレンドに合わせた販促を開催することで、「いま買う理由」をつくるのです。

 販促企画を開催する場合、ポイントになるのがスケジュールです。開催開始日から逆算して準備を進めないと「ひな祭りだからポイント3倍」のようなひねりのない企画になってしまいがちです。企画を検討する時間をしっかり用意して販促企画の準備を進めてください。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。