ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

EC事業者のリアルな悩みとは【no.2073】

 前回のECMJコラムでは、まず前提としてEC市場は以前として伸び続けていることを紹介しました。そして市場は「需要<供給」の方向に向かっていくこと。既存事業がある会社のEC事業が伸び悩む理由は、その「取り組み方」にあること。これらの話をしました。

 今回は、EC事業者のリアルな悩みの話です。

どうやって売上を上げれば‥

 ひとつ目のケースは「EC事業をスタートしたけれども、どうやって売上を上げればいいのかがわからない。社内の誰に任せればいいのかもわからない」です。

 既存事業がある多くの会社にとってEC事業ははじめての経験です。WEBサイトの運営という点においては、ホームページはもっていると思います。ただ、基本的にホームページは情報を発信するためのものであり、サイトからの何かしらのコンバージョンを求められません。WEBサイトと使って「売上を稼ぐ」というのはECサイトがはじめてになります。

 当然、EC事業のためのスタッフがいるわけではありません。EC事業のためのスキルはECサイトを開設してから身に着けることになります。また、インターネットのマーケティングの特色である「つくってから改善」の「更新」の概念も、それまでリアルの事業をやってきた会社だと概念自体が掴みづらいものの可能性があります。

 組織的にも、マーケティング的にもEC事業に手がつけられない状態になります。

事業の優先度が低くて‥

 ふたつ目のケースです。「EC事業をはじめたものの、事業の優先度が低く、モチベーションの低下とともに運営にあまり手が回らなくなってしまっている」です。

 EC事業がもっとも盛り上がるのはECサイトを企画し構築するまでです。こういうECサイトにしたい、ここは修正したい。ECサイトを立ち上げるまでは現場も上長も意欲高く取り組むのですが、運営がスタートするとなぜか興味を失ってしまう。厳密にいえば、スタートして一発目に売上が上がらないと興味を失ってしまいます。

 既存事業があってのEC事業です。そうこうしているうちに既存事業が繁忙期に入ったり、実績が落ちてくるとECを担当するはずだったメンバーも既存事業に引き込まれてしまう。ECサイトが、存在しているけれども更新されない「ゾンビ化」していくわけです。満足に手を入れていないわけですから、もちろん売上が伸びることはありません。

 同業他社でもEC事業に力を入れているところは当然あるわけです。「時間があるとき、余裕があるとき、気づいたとき」の更新では市場から遅れてしまいます。

成功事例は学んだけれど‥

 三つ目のケースです。「EC事業の成功事例は学んだけれども、『自社のケースではどこからどう進めれいいか』がわからない」です。

 EC事業を展開していく上で、いかに売上を上げていくか、経営者やスタッフの皆さんはよく勉強されていると思います。マーケティングを進める上の情報収集は基本の「キ」です。ただ難しいのは、セミナーや書籍・WEBからの有益な情報も「行動」に落とさないことには成果につながらないということなのです。ポイントのひとつ目は情報収集ですが、ふたつ目は実践です。これがセットにならないと、EC事業は伸びていかないのです。

 しかし、成功事例は他社のケースであることが100%です。商材もスキルも意欲もタイミングも組織も何もかもが異なります。また大まかな経緯と施策と成果を学んだとしても、「なぜその判断に至ったか」の考え方は吸収できるものではありません。この「なぜその判断に至ったか」は自分たち自身で身に着けていかなければいけないのです。

 成功事例を学んでも、「じゃあ、明日なにをするか?」を考えると足が止まってしまうのではないでしょうか。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。