ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

今さら?ではない「EC(ネット通販)」の成長の芽【no.2080】

 先日、日経クロストレンドの「トレンドマップ2022下半期」が発表された。詳細は日経クロストレンドの記事(有料)をご覧いただきたいのだが、「将来性」のマーケティング部門、そして「経済インパクト」のマーケティング部門で第一位となったのが、「EC(ネット通販)」なのだ。

ECなんて今更?

 ちなみにトレンドマップは「将来性」と「経済インパクト」の2つのカテゴリしかない。そして各々のカテゴリに「マーケティング」「テクノロジー」「消費トレンド」の3つの部門がある。つまり6つの部門しかなく、メインである「マーケティング」において「EC(ネット通販)」が第一位であることをどう思うだろうか?

 このECMJコラムを読んでいる多くの方、そして私の意見もおそらく一緒である。「ECなんて今更なんじゃないの?」と。

 私自身の話をすれば、2005年にECベンチャーに入社して以来、17年間EC業界で仕事をしてきた。2005年から2011年までの6年間はネットショップを運営してきた。そして2011年から現在に至るまで11年をコンサルタントとしてECに関わってきた。計17年間、毎日毎日ECについて考えつづけ、そりゃ飽きを感じることもある。それでも「EC(ネット通販)」は第一位なのである。

「まだまだこれから」ということ

 ここで考え方を改めなければいけないのは自分の頭の中ということになる。私もECMJも、そしてネットショップを長く運営している皆さんも、「今さらEC」と思いがちであるが、世間・世の中の全体からみれば、「まだまだこれから」ということなのだ。この2年以上にわたるコロナ禍を経て、やっとECが広く一般化したということなのだろう。

 実際に物販事業における日本のEC化率は2021年の約8%から2022年の約8.8%に110%の成長を遂げている。多くの業界で市場規模が縮小している日本の中で、ECは大きく伸びているわけだ。また、EC化率の約8.8%という事実もこれからの可能性を感じさせる。あくまでBtoCのEC化率になるが、世界全体でいうと2021年で19.6%。これは現在の日本のEC化率が将来的に少なくとも倍に成長するのではないかと示唆しているともいえる。

 自分事でいえば「飽きを感じている」場合ではないわけである。

「EC(ネット通販)」の成長の芽

 さて、それではさらなる「EC(ネット通販)」の成長の芽はどこにあるだろうか。少しここを考えていきたい。

 ひとつは単純に、EC事業者が増えることである。いままでEC事業をやっていなかった企業がEC事業をスタートさせる。なんとなくECサイトをもっていた企業が事業としてECをリスタートする。EC事業者の数が増え、ECの市場に商品が増え、それにともなってソリューションが活用されれば市場規模が広がっていく。当たり前だがもっとも重要な要素になる。数はすべてを凌駕するわけだ。

 次は新しいテクノロジーやノウハウが必要になるかもしれない。ネットショップや商品の数が増えるほど、ユーザーの「見つけやすさ」が重要になる。レコメンドシステムやパーソナライズである程度カバーはしているものの、既存の仕組みの中では未知の発見がしづらいのも確かである。いかに見つけられやすくするか。そもそもの店舗のコンセプトを尖らせることで、訴求力を高め、「話題にされる」ことも大切になる。

「商品企画の考え方」を変える

 もう一歩踏みこめば、「商品企画の考え方」を変えることも重要になる。

 基本的にほぼすべてのネットショップが「自分たちが売りたいモノ」を売っている。既存事業の新しい販売チャネルとしてEC事業をしている企業が多いのが現実。この場合、ECサイトで販売する商品は「自分たちが売れるモノ」になる。つまり、在庫があるものや既存の製造ライン・仕入れにのっているものになる。

 しかし、リアルとネットは市場がまったく異なる。ネットは、お客様に見つけられなくては存在していないものと同じ、市場である。「自分たちが売りたいモノ」ではなく、「お客様が買いたいモノ」。これを企画し売ることができれば、より事業拡大の芽が出てくる。ここでのポイントは、自社の既存の商品を「売らない」ことではない。自社の既存の商品のノウハウを「活かす」ことである。市場のニーズと自社のノウハウをミックスし、「お客様が買いたいモノ」をつくれれば、ECの次の主役になれるはずだ。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。