ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ECの定性データの代表格。レビューとアンケート❷【no.2084】

 「お客様の顔が見えない」ことから定性的なデータが得づらいEC事業。前回のコラムでは定性的なデータの代表格であるレビューの活用について紹介しました。今回のコラムではもうひとつの定性的なデータの代表格・アンケートについて考えます。

アンケートをふたつの観点で考える

 多くの場合、レビューはECサイトの機能として導入されています。記入内容も画像・動画・テキストをフリーでという形式が一般的です。それに対して、アンケートはネットショップ独自がお客様にアプローチするもの。そして、その内容も自社内で決めることがアンケートの特徴です。つまり、アンケートの方がレビューに比べて様々な工夫を加えることができます。

 しかし、ありがちなのが「アンケートを配布し、いくらか回答があったものの、それをどうネットショップに活かせばいいのかがわからない」というもの。お客様からの回答は集まったが、自分たちの行動を変化させる要因にしづらくて悩んでいる事業者の方も多いのではないでしょうか。

 まずはアンケートをふたつの観点から考えてみましょう。

ひとつは統計的なデータの取得

 アンケート活用の観点。ひとつは統計的なデータの取得です。

 ネットショップのアンケートでよくある設問。「あなたは男性ですか、女性ですか」。「あなたは何十代ですか」。「ネットショップで購入した商品は自分用ですか、贈答用ですか」。「ネットショップを知ったきっかけは何ですか」。こういった設問については、アンケートをつくる側も考えやすく、統計データとしても集計しやすいものになります。

 ただ、この統計データを集計したとして、ネットショップの今後にどう活かすのかが悩みどころです。たとえば、「あなたは男性ですか、女性ですか」の設問。仮に、「男性6割、女性4割」だったとします。ネットショップのページを男性向けに変えますか?このデータから変更することはないのではないでしょうか。「あなたは何十代ですか」の設問も同様です。仮に60代のユーザーが多かったとして、サイトの文字を大きくしますか?あくまで検討材料のひとつでしょう。

 これらの統計データを活用するとしたら、ポイントは「そもそもどう考えていたのか」です。ネットショップのペルソナ・対象顧客像として「男性の60代」という設定があったとすれば、「現実のお客様との乖離」を統計データから確認することができます。自社の設定と現実のお客様をチューニングすることができるのです。前提が大切だということですね。

アンケートをつくることがポイント

 もうひとつの観点です。アンケートの目的はあくまで、自社のマーケティングの改善です。だとするならば、アンケートの回答数が多いよりも、有効なアンケートの数が多い方がいいわけです。回答数(返信数)が少なくても、内容が有効であれば意味があります。

 アンケートが自社のマーケティングの「商品企画」「競合分析」「広告活用」「情報発信」に活かせればベターです。ならば、直接的に「弊社以外のどの会社の商品を利用したことがありますか?」と聞いてしまえばいいのです。自分たちがマーケティングに役立てたい部分をはっきり聞いてしまいましょう。

 しかしなかなか皆さん奥ゆかしいのが現実です。少し濁したフリーテキストの質問の中から、「商品企画」「競合分析」「広告活用」「情報発信」に関連しそうな部分を探します。逆なのです。アンケートからマーケティング要素を探すのではありません。知りたいマーケティング要素を先に決めて、それをアンケートに盛り込むのです。ですから、「今回のアンケートは商品企画に関するもの」。「100名には競合分析用のアンケートを送ってみよう」。この考え方で構わないのです。

 アンケートのマーケティング活用は、アンケートを分析するのではなく、アンケートをつくることがポイントなのです。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。