ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

EC事業の売上目標が定まるとデータ項目がきまる【no.2111】

 EC事業とは面白いもので、売上目標が定まると様々なデータがみえてくる。だからこそ、「とりあえず売上目標を立ててみる」ことが大事になる。もちろん、当初の売上目標は「気合」で問題ない。

EC事業のお金的な指標

 売上目標を定めるとEC事業のお金的な指標がみえてくる。

 まずEC事業を回していくための経費は、商品原価、システム利用料、物流経費、広告費、人件費の5つが主になる。商品原価はECサイトで販売する商品の原価、人件費はECサイトを運営するスタッフの皆さんの費用とオフィス賃料になる。EC事業の場合、多くが変動費になる。システム利用料、物流経費、広告費は変動費になる。

 システム利用料はクレジットカード決済や自社カート(ショッピングモールカート)のロイヤルティが主になる。物流経費は配送料ほか倉庫の保管料やアルバイトさんの費用。広告費はそのまま広告宣伝費になる。EC事業の売上目標を定めると、これらの費用の配分を自動計算することができる。現実的に最後にいじるのは広告費であり、ここがいくら残るかが勝負のポイントになるケースも多い。

EC事業の事業としての指標

 次に、売上目標を定めるとEC事業の事業としての指標がみえてくる。

 売上目標は「セッション数×コンバージョン率×客単価」に分解することができる。すでにECサイトを営んでいる場合は、現状の数字が当てはめられるはずだ。コンバージョン率と客単価は大きく動かすことができないデータ指標になるので、主にセッション数を動かすことになる。つまり、どれくらいお客様を集められるか。

 セッション数は新規顧客数とリピート顧客数のふたつにわかれる。新規顧客のお客様が現在と同じ比率でリピート顧客に引きあがってくれるとすれば、どれくらい新規顧客を増やしていかなければいけないかデータがみえてくる。また、新しくお客様を獲得するための「CPA(=顧客獲得コスト)」のデータがみえているならば、増やすべき新規顧客数に対しての広告コストが「CPA×新規顧客数」で計算できる。

 この数字が前述した「広告費」とバランスしているかが問題なわけだ。

必ずどこかに「無理」がでる

 EC事業の売上目標を定め、それを分解した数値を作成したとき、必ずどこかに「無理」がでてくるものなのだ。

 たとえば前述したように、売上目標を達成するための新規顧客の目標値があるのにも関わらず、思うような広告予算が取れなかったりする。売上目標を達成するためには、赤字を覚悟したEC事業の投資をおこなわなくてはならない、など。もちろんそれも事業成長を考えれば必要なことである可能性もあるのだが、計画としての予測と「乖離していないか」理解していることが重要なわけだ。

 そして、そもそもEC事業自体が「ビジネスとして成立」していないといけないわけで、赤字をかけてEC事業を拡大させたとしても、ビジネスとして成立していない場合は仕方がない。まずは売上目標を設定して、かかる経費と事業の数値のバランスを可視化してみよう。

「無理」の落としどころは決まっている

 ちなみに、これらをおこなったときの帰結先はほぼほぼ決まっている。ひとつは利益率の高い商品を企画しなければいけないこと。ひとつは広告費をできるかぎり使わないモデルのECビジネスを設計しなければいけないこと。そして、リピート顧客への引き上げ率を上げることでより利益が生まれるようになること。この3つのどこかに落ち着くはずだ。

 EC事業はデータのビジネスである。今回のコラムで紹介した以外にも、売上目標を様々な数値項目に落とし込むことができる。まずは大きく、自社のEC事業の向かう先を計画・予測してみよう。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。