あなたはAIを使う側に回ることができるか。たった2年で変わった市場環境【no.2211】
Nvidiaのジェン・スン・ファンCEOの言葉を知っている人も多いと思う。
「AIが仕事を奪うのではなく、AIを使いこなす人たちによって淘汰される」
そうなのだ。AIが勝手にあなたの仕事を奪うことはありえない。AIを活用する人たちが、あなたの仕事、そして仕事を「生活」や「人生」さらには「あなた自身」と言い換えるならば、AIは「あなた自身」の存在意義を淘汰していく。そして、それは世界のどこかで、いま現在進行形で起こっていることなのだ。
*時代の進行を早めたコロナ禍
世の中の変化のスピード、市場環境の転換があまりにも早い。
2020年から始まった「コロナ禍」からある言葉が登場した。DX=デジタルトランスフォーメーションである。現実的に多くの会社がいまもDXに取り組んでいる。ただ実際は、ビジネスのトランスフォーメーションではなく「単なる業務のデジタル化」に取り組んでいるだけの部分もあるのだが、いずれにせよコロナ禍はデジタルへの対応を企業や人間に必然的に迫り、時代の進行を一気に早めた。
ECやマーケティングの業界においても、いかにデジタルを活用してお客様と接触するか、また次の仕事をいただくか、ということが課題になった。インフルエンサーマーケティングやインサイドセールスなどの言葉がより広く浸透した時期でもあった。実際にECMJにおいても、一度もリアルでの対面をすることなく「マーケティングチームの内製化支援」のコンサルティングが決まったこともあった。オンラインの面談だけで契約を交わし、オンラインでミーティングを進めていったのだ。思えば不思議な関係である。
*AIがエンジニアの市場を変えた
このDXトレンドによって、よりニーズが高まったのがエンジニアの存在である。ITシステムの構築はもちろんのこと、ECサイトの構築などもエンジニアの力が必要になる。エンジニアというのはご存じのとおり、プログラミングコードを操る仕事であり、特別な知識と経験をもった専門職とされてきた。社内の少しITに強い人材を「エンジニア」として学ばせたとしても、専門職の人間には知識や経験が到底追いつかないわけだ。想像どおり、コロナ禍以降エンジニアの単価は上がり、そして人材の確保が難しくなっていったわけだ。
ところが、現在はどうだろうか。
AIの台頭により、プログラミングの知識が不要でもシステムの構築ができるようになりつつある。現実的に、経験値があまりない「駆け出しのプログラマー」がおこなうような仕事はAIに代用されている。まだ日本では多くの事例を聞かないが、GAFAMにおいてはエンジニアのリリースが始まっていることを知っている方もいると思う。コロナ禍が過ぎてからたった2年である。AIにより、たった2年でエンジニアの市場環境が180度変わってしまったわけだ。
*AIを使う側に回ることができるか
たった2年。社会人からすれば長い期間の中の連続した2年だが、考えてみて欲しい。エンジニアを志した高校生が大学で理系の学部に進学する。情報処理をイチから学び、一流のエンジニアを目指して勉強する。そして3年生4年生で就職活動をおこなう。この間に世の中からエンジニアのニーズが激減してしまったということなのだ。世の中の変化の激しさは、高い年齢の人間だけではなく、若い年齢の人間にも大きなインパクトを与えているのだ。
ただ、もしこの現状を感じとれているならば、エンジニアを志して理系の学部に進んだ学生も「AIを使って」システムをつくる側に回ればいいだけだ。話はとてもシンプル。そしてこれは、我々社会人の全員にも同じことが言える。「AIが仕事を奪うのではなく、AIを使いこなす人たちによって淘汰される」。この言葉は、人によっては厳しく、しかし人によっては希望を感じる言葉でもある。ジェン・スン・ファンCEOの言葉は重い。
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