ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

定期的に「書店」にいこう。「本=市場」である!【no.2221】

 世の中の市場環境の変化やトレンドの変化をキャッチアップするために、具体的な手法としておすすめしたいのが、「定期的に書店に行く」という方法です。

*インターネットの世界は「紛れ」が多い

 情報をウェブサイトやSNSで収集する人は今の時代非常に多いと思いますが、あえてリアルの書店に足を運ぶことを意識してみてほしいのです。なぜなら、インターネット上の情報は必ずしも市場やトレンドの変化を反映していないからです。インターネットは情報発信のハードルが極めて低いため、人の思いつきやちょっとした興味、趣味といった主観的な要素から、日々膨大な情報が発信されていきます。そのため、出てくる情報が市場の実態や商売の流れと結びついているとは限りません。

 インターネットは宇宙のように無限に広がる世界では、土地や商圏といった境界が見えにくく、情報に触れる側も全体像を把握しにくいという特徴があります。さらに言えば、今のインターネットはパーソナライズが進みすぎているため、自分の趣味嗜好に合った情報ばかりが表示され、視野が偏る危険性があります。結果として、自分がまだ知らない市場の変化や新しいトレンドを見失ってしまう可能性が高くなるのです。

*本があれば「市場」がある

 これに対して書店のメリットは明快です。書店というのは、そもそも商売が成り立たなければ継続できません。インターネット上では商売と関係なく趣味や思いつきで情報発信ができますが、書店に並んでいる本は「売れる」と見込まれるカテゴリーやテーマです。つまり、店頭に並ぶ書籍やカテゴリーそのものが、すでに市場の存在を裏付けているといえます。本というのは、本という「モノ」のカタチをした「情報」なのです。

 さらに、書店は物理的なスペースが限られています。限られたエリアの中で最適化を図る必要があるため、売れない本や売れないカテゴリーは自然に棚から消えていきます。逆に、新しいトレンドやニーズが出てきたカテゴリーはスペースを確保して棚に並ぶ。だからこそ、書店を訪れると「増えているカテゴリー」「減っているカテゴリー」を同時に観察できるのです。これはインターネットではつかみづらい視点です。

*回遊しやすい書店を選ぼう

 特に有効なのは、同じ書店に定期的に通うことです。いつも同じ場所に行くことで、棚の移り変わりやカテゴリーの変化を定点観測することができます。例えば、入口近くに置かれる「今の主力」の並びをチェックしていれば、その時々の社会的な関心や市場の方向性が見えてきます。

 私自身、池袋のリブロという書店に足を運んでいます。ここはワンフロアで広がる平面型の書店なので、ぐるぐると回遊しながら全体を見渡せるのが魅力です。一方で、池袋にはビル型の大型書店もありますが、こうした縦に長い書店はマーケティングのトレンドを観察するという目的ではあまりおすすめできません。なぜなら、上下の移動が大変で、気になったものをもう一度見直すのも億劫になり、観察が断片的になりがちだからです。観察のためのハードルが高いと継続ができません。ある程度の広さがあるワンフロアの回遊できる書店を定点に選ぶのがおすすめである理由です。

*自分の「関心外」に気づくことが大切

 書店を活用すると、自分の関心外にある市場の変化を感覚的に捉えられるようになります。もちろんインターネットでの情報収集も重要ですが、それだけに偏るとパーソナライズの罠にはまってしまいます。だからこそ、リアルの書店を定点観測するという習慣を持つことで、市場やトレンドに対する「入り」の感度を高めることができるのです。

 最初は漫然と眺めるだけでも構いません。通い続けるうちに「あれ、このカテゴリーが増えている」「このジャンルが減ってきた」という感覚が身についてきます。それが日々の市場感を養うヒントになり、行動につながっていくはずです。ぜひ、定期的に書店に足を運んでみてください。そこには、ウェブ上では見逃してしまう市場環境の変化やトレンドの兆しが表れているのではないでしょうか。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから