日々の数字と要因を積み重ねる!組織で実践したいデータ活用の基本【no.2222】
データ活用という言葉は、いまや多くの現場で当たり前のように語られています。ECの売上やセッション数を毎日チェックしている、という担当者も少なくありません。しかし、実際に「データを見ている」ことと「データを活用している」ことの間には、大きな差があります。
*データは「線」でみる
多くは「点のデータを見る」ことをやってしまっているかもしれません。今日の売上はいくらだった、今週のセッション数はいくつだった――もちろんそれ自体に意味がないわけではありませんが、それはあくまでデータの「点」にすぎません。大事なのは、データの点と点を結んで「線」として捉えることです。データの変化を見て、そこに潜んでいる「なぜ」を問いかけること。これこそデータ活用の第一歩です。
例えば、前週のセッション数が1,000セッション、今週が1,500セッションだったとします。大事なのは「1,500セッションあった」という事実そのものではなく、「1,000セッションから1,500セッションに増えた」という変化です。データ活用は、この変化に着目することから始まります。そして重要なのが、その変化を生み出した「要因」を突き止めることです。
*大切なのは「記録する」こと
要因には大きくふたつあります。
ひとつは自分たちの施策によって起きた「内的要因」。広告を出した、キャンペーンを実施した、導線を改善した――こうした行動の結果として数字が変化したケースです。もうひとつは外部環境によって起きた「外的要因」。天候の変化、ニュースやテレビでの紹介、SNSでの話題化など、自分たちが直接コントロールできない事象です。
内的要因は、再現や強化が可能になります。効果が出た施策をより洗練したり、アクション量を増やしたりすることで、さらに成果を高めていくことができます。一方で外的要因は自分たちでつくり出すことはできませんが、事前に対応策を決めておくことが可能です。たとえばテレビで商品が紹介されたときに、すぐに「テレビで紹介されました!」とメルマガやSNSで告知できる体制を整えておくといった具合です。外的要因をチャンスに変えられるかどうかは、この事前準備にかかっています。
大切なのは、これらの要因を「記録する」ことです。売上やセッション数といったデータは、システムに残っている限りいつでも後から取得できます。しかし、要因はその瞬間にしか残せません。どんな施策を行ったのか、どんな出来事があったのか、顧客からどんな声が寄せられたのか――これらを日次で明文化しておかなければ、数週間後には思い出せなくなってしまいます。実はここがデータ活用の「最大の分岐点」なのです。
*要因を特定し、手を打てるかどうか
あるショップで、こんな出来事がありました。
もともと売れずに倉庫に眠っていた商品を在庫処分のつもりでECサイトに掲載していました。ある日、突然その商品が200個、300個と一気に売れてしまったのです。施策を打ったわけでもなく、広告を出したわけでもありません。スタッフも「なぜこんなに売れたのか」と首をかしげるばかりでした。
そのときお客様から問い合わせが入りました。「あの商品、もう販売しないのですか?」と。逆にスタッフが「なぜこの商品が売れているのですか?」と理由を尋ねてみると、お客様は当然のように答えました。「知らないんですか? 今SNSで話題になってますよ」と。
実はその商品、ある人気アイドルグループメンバーの趣味との偶然の一致によって、アイドルの「非公認のファングッズ」としてSNS上で取り上げられ、ライブに持参したいアイテムとして爆発的に拡散されていたのです。
結果として、在庫はすべて完売し、その後は追加生産に踏み切りました。最終的に数千個規模の販売にまで発展した人気商品になったわけです。これがもし、データだけを眺めていたら、「急に売れた」で終わっていたでしょう。しかし顧客の声を拾い、要因を特定したことで、外的要因を理解し、次の対応につなげることができたのです。
*チームの意思決定のレベルを上げよう
この事例は、データ活用の本質をよく表しています。データは「なぜ」を伴って解釈されなければ意味がありません。そしてその「なぜ」を特定するには、数字とともに要因を残す仕組みが不可欠です。ECMJでは、この仕組みをチームに根づかせるために数値管理表の作成を推奨しています。売上やセッション数などのデータに加え、施策(内的要因)と理由・特筆事項(外的要因や顧客の声)を毎日記録する。たったこれだけで、数字と要因が自然と紐づき、チームの意思決定が変わっていきます。
データは後からでも取れます。しかし要因は、日々の記録でしか残せません。「データ活用」とは、数字を眺めることではなく、変化を見て、要因を明文化し、未来の行動に結びつけること。数字と要因をセットで扱うことができる組織こそ、データを「活用している」と言えるのではないでしょうか。
カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 3.Eコマースの収益アップ, 4.Eコマースの人財育成, 5.Eコマースの分析