ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

一度、180度の理想を掲げて発想の広げる【no.2223】 

 マーケティングを展開するときに、ふたつの視点を持っておくことが重要です。

 ひとつは改善の積み重ねで目標を達成し、成果を生んでいくという考え方。現状からの積み上げ式のアプローチです。そしてもうひとつは、理想の形をまずイメージし、そこから逆算してマーケティングを進めていくという考え方です。もちろん基本的に重要なのは積み重ねの方のマーケティングであることは間違いありませんが、今回はこの「理想から逆算する」という考え方について考えてみたいと思います。

*一度、一気に180度まで振り切る

 仮にマーケティングのスタート地点が円で言う0度の位置だとします。改善の積み重ねはそこから5度、10度、15度と少しずつ積み上げていくイメージです。一方で逆算型は、一気に180度の理想の位置を設定します。現実には到底実現できないように見える理想像をまず掲げ、そのうえでどうすれば160度や140度まで近づけるのかを考える。ここに逆算型のマーケティングの意義があります。

 たとえば、自社のお客様は誰で、どんな情報を発信すれば喜ばれるのか、どんな言葉を選べば検索や認知につながり、コンバージョンを高められるのかといった議論は日常的にされています。しかし、理想から考えるとどうなるでしょうか。すでに市場で売れている商品と全く同じものを同じ価格で提供し、しかも競合よりもデザインやブランド性、機能性でわずかに優れた商品を用意できたらどうでしょう。

 すでに競合で売れている商品ですからニーズは確実に存在します。同じ価格で「少し良いもの」が提供できれば、理論的には必ず売れるはずです。しかも、その競合商品にすでに興味をもっているお客様層に対してアプローチできれば、確実に売上は見込めるでしょう。もちろん利益構造や原価の問題は残りますが、180度の理想像としては明快です。

*よく考えれば、意外とできることはある

 こうした理想の状態を示すと、多くの場合、拒絶反応が返ってきます。「そんなことできるわけがない」「だからこそ地道に積み重ねるしかない」という声です。しかし本当にそうでしょうか。現在はデジタルマーケティングの時代です。様々な角度から情報を収集し、検証する手段が揃っています。180度の理想から逆算し、どこまで現実に近づけられるかを考えることは十分に可能です。

 競合が販売している商品がどの程度の原価で作られているのかを調べることは難しくありません。実際に購入し、工場に問い合わせればおおよその見積もりは取れます。工場直営の会社にコンタクトすれば、どの機能を追加できるのか、どの程度のコストで改良できるのかも把握できるでしょう。機能性の改善が難しくても、デザイン性を高めることなら大きなコストをかけずに実現できる可能性があります。「そんなのは無理だ」と切り捨てるのではなく、どの部分なら可能か、どの工夫なら現実的かを検討する余地があるのです。

*どうだったら楽になるか、を考えよう

 また、集客の面でも同じことが言えます。「お客様にどうやってリーチするのか」「競合の顧客にどうやってアプローチするのか」という疑問も出てくるでしょう。しかし、解決できる部分はあります。たとえば競合の商品を紹介しているインフルエンサーに自社商品を試してもらう方法や、X(旧Twitter)で競合アカウントのフォロワーに広告を配信する方法も存在します。もちろん全ての状況で可能なわけではないですが、大切なのは「どうすればできそうか」を考えることです。

 180度の理想像を掲げてみれば、10個のうち3つは不可能でも5つはできるかもしれない、残り2つは工夫すれば代替案が考えられる、といった議論です。最初から「できない」と思考を止めるのではなく、可能性を分解することで発想の幅が広がります。積み重ね型の改善は大切ですが、それだけでは発想が固定化しがちです。だからこそ、時には思い切って180度の理想論を掲げる。「もしこんな状態だったら商売はどんなに楽になるだろうか」と議論してみることが必要です。そのストレッチがチームの頭脳を柔軟にし、新しい行動のきっかけになります。

カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 2.Eコマースを続ける, 4.Eコマースの人財育成, 7.Eコマースのひと工夫

ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから