ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ネットショップは「比較」の商売。お客様が選ぶ5つの視点【no.2227】 

 ネットショップの本質をひとことで表すなら「比較」だといえます。なぜなら、ECには地理的な距離の制約がありません。東京のショップの商品も、大阪のショップの商品も、さらには海外のショップの商品でさえ、ワンクリックで横並びに比較できてしまいます。

*自分も消費者として「比較」している

 実店舗であれば、街を移動し、複数の店を回るのには時間と労力がかかります。しかし、ネットショップにはそれがない。移動コストがゼロだからこそ、消費者は当然のように比較をおこない、その中から最も魅力的だと思う商品やショップを選びます。事業者としては「自分のサイトを訪れたお客様は自社の商品を気に入って買ってくれている」と考えがちですが、実際には「他と比較したうえで選ばれている」と考えたほうが現実に即しています。

 ですが、多くのEC事業者は、自社のサイトや商品にばかりに目を向けがちです。もちろん、日々のEC運営に追われる中で競合の状況を定期的にチェックするのは簡単ではありません。しかし、自分が消費者の立場に立って考えれば、当たり前のように比較して購入しているはずです。たとえばパソコンを買うとき、ひとつのサイトだけを見て決める人は少なく、複数のショップを見比べて価格や機能をチェックするはずです。自分も消費者として比較をしている、事業者にとって欠かせない視点です。

*「比較」ポイント、5つの要素

 では実際に、お客様はどのような点を比較しているのでしょうか。大きく分けると5つの要素があるのではないかと考えます。

 第一に「価格」です。価格は絶対的な比較軸です。同じ商品であれば、安いほうが選ばれるのは自然なことです。もちろん、価格が同じなら他の要素が重視されますが、そもそも価格が大きく異なるならば、それだけで選択が決まるケースも少なくありません。

 第二に「デザイン性」。見た目がかっこいいか、色のバリエーションが豊富か、自分の好みに合うか。こうした要素は、特にファッションやインテリアなど感性が関わる商品では決定的な差を生みます。

 第三に「機能性」。より多くの機能があるか、処理が速いか、容量が大きいか。たとえばフォントが5種類しか選べない製品と、30種類から選べる製品。音源が10種類しかない楽器と、1,000種類から選べる楽器。あるいは処理速度が10秒かかるものと1秒でできるもの。こうした差は「便利さ」や「使い勝手」の違いとしてお客様の判断を左右します。

 第四に「ブランド性」。知っている名前か聞いたことがある名前かどうかは大きな要因です。価格・デザイン・機能がほぼ同じであれば、無名のメーカーよりも認知度のあるブランドが選ばれる。ブランドは「安心感」や「信頼」と直結しており、お客様が失敗を避けたいときに強く作用します。

 そして第五に「サービス」。これは同一商品を複数店舗が扱っている場合、最後の決定打になります。配送が早い、保証が手厚い、返品が柔軟にできる。こうしたサービス要素が、最終的な比較のポイントになるのです。

*自社がどこで勝てるかを考えること

 結局のところ、お客様はこれらの要素を総合的に見比べて「どこで買うか」を決めています。事業者側はどうしても「価格で勝てない」と考えがちですが、実際には価格以外にも差をつけられるポイントは存在するのです。デザイン性を高める、機能性のわかりやすい説明をする、ブランドの信頼感を補うために実績を伝える、選択肢は一つではありません。

 重要なのは、「自社はどこで比較されているのか」「どの要素で勝てるのか」を把握し続けること。そのためには競合調査を意識的に行う必要があります。週に一度でよいので、主要な競合サイトを見て、価格・デザイン・機能・ブランド・サービスの観点で比較表をつくる。さらに、レビューや問い合わせを通じて、お客様が実際にどんな理由で選んでいるのかを拾ってみてください。こうした地道な取り組みが、お客様に選ばれ続けるための基盤になります。

 ネットショップの運営は、自社を磨くだけでは不十分です。比較の構造を理解し、お客様がどのポイントで判断しているかを把握すること。そこから逆算して、自社の強みを打ち出すこと。これこそが「比較」の商売で成果を出すための思考法です。

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    ishida

    石田 麻琴 / コンサルタント

    株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから