売上の公式はECのマーケティングにおける「壁打ち相手」【no.2239】
ネットショップの売上について語るときに、必ず出てくるのが「売上の公式」です。ECMJコラムをお読みのみなさんならばご存じの方も多いと思います。「売上=セッション数 × コンバージョン率(CVR) × 客単価」。非常にシンプルな公式ですが、ECを理解する上で避けては通れない基本の考え方です。
セッション数とは来店数のことです。ネットショップに何人訪れたか。コンバージョン率とはそのうち何%のお客様が購入したか。客単価とは1回の購買でお客様が平均いくら購入したかです。そして、この3つのデータ項目を掛け算すると「売上」になります。逆に言えば、売上を伸ばすにはいずれかの項目を改善すればよい。ECサイトの運営を考えるとき、この公式の「どの数値に効かせる施策か」をはっきりさせることが大切です。
*ECサイトならではの「CVR神話」
ただしEC運営の現場を見ていると、この3つの指標に対する理解には偏りがあるようです。特に多いのが「コンバージョン率にばかり注目する」ケースです。「セッション数=来店数」「客単価=購買額」は実店舗の経験のある人には直感的に分かりやすい指標です。しかしコンバージョン率という概念は実店舗にはありません。ネットのマーケティング特有のデータ項目です。UIやページ改善により、数字を劇的に変えられるのではないかという期待も相まって、CVRばかりを見てしまう会社が少なくありません。
もちろんCVRは重要です。しかし、それだけを追いかけていてもECサイトの全体像を見誤るのです。実際には、「セッション数・CVR・客単価」のいずれのデータ項目が動いても売上に影響します。だからこそバランスよく各々を観察し、どの指標に手を入れるべきかを見極める必要があるのです。
*毎日みれば「外的要因」に気づくことができる
大切なのは、これらの指標を「毎日見る」ことです。
なぜ毎日かといえば、それは「外的要因」の存在にあります。改善策・施策といった内的要因は、後から振り返っても分析することができます。しかし、天候や季節要因、競合の動き、ニュースやトレンドといった外的要因は、後から振り返っても把握しづらいのです。毎日データを見ていれば、「昨日は急にセッションが増えた」「今日は客単価が落ちている」など、リアルタイムに近い形で異変をキャッチできます。その裏側に外的要因があるかもしれない、と気づけるのは日次でデータを見ている人だけです。
ECMJでは、この公式の3つのデータ項目に加えて「売上そのもの」と「受注件数(セッション数×CVR)」を合わせた5つの指標を毎日確認することを推奨しています。この5つのデータ項目を見続けることで、施策と結果のつながりがはっきりし、ECサイトの改善のサイクルが回しやすくなるのです。
*売上の公式を「コンパス」として活用する
売上の公式は、施策の検証における「壁打ちの相手」です。たとえば、ECサイトに新しい販促企画を打ったとき、データの変化がどこに現れたか。セッション数が伸びたのか、CVRが改善したのか、客単価が上がったのか。必ずどこかに変化が出るはずです。その変化をつかむことで、施策の有効性を判断することができます。
もちろん、一方で、この公式だけに頼りすぎてもいけません。顧客満足度やブランドの醸成といった取り組みは、短期的には数字に現れにくいものです。むしろ長期的に積み上げるものだからこそ、最終的に大きく花開きます。売上の公式は「すべてを測るもの」ではなく、「短期の動きを捉えるためのもの」と理解しておきましょう。
売上の公式は、日々のデータを観察し、施策と成果をつなぐためのフレームです。「どの施策がどの数字に効いたか」を理解し、データと対話する習慣を持つことが大切です。
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