「客単価=顧客層」。30%の改善を目安に考えよう【no.2241】
ネットショップの「売上の公式」において、「客単価」は重要な要素のひとつです。「売上=セッション数 × コンバージョン率 × 客単価」。この中で客単価とは「売上 ÷ 受注件数(セッション数 × コンバージョン率)」で表され、1人のお客様が平均していくら購入したかを示しています。
客単価は一見シンプルな数字ではありますが、このデータ項目を改善することは簡単ではありません。なぜなら、客単価は単なる指標ではなく、「顧客層」そのものを表しているからです。
*お客様の財布の中身は変わらない
たとえば、客単価が5,000円のお店があったとします。
この客単価5,000円という数字は、そのお店のラインナップ、商品の品質や価格帯、ブランド性を含めたショップの全体像に対して、「5,000円を払う層のお客様」が集まっていることの結果なのです。言い換えれば、5,000円の客単価のお店には、5,000円を支払うお客様が集まっているのです。
ここで「売上を倍にしたいから、客単価を5,000円から1万円に上げよう」と考えるとどうなるでしょうか。
単純に商品の価格を倍に設定したり、ラインナップを一気に高額帯の商品に切り替えたりしても、今のお客様はついてきません。なぜなら、お客様の財布の中身は基本的に一定だからです。収入や可処分所得は短期間で大きく変わるものではなく、お客様が突然2倍の価格を払う層に変わることはありません。客単価を大きく上げるというのは、事実上「顧客層を総入れ替えする」ことを意味するのです。
*突然、商品単価を3倍程度に上げた結果
実は私自身も、過去にネットショップの運営者をしていた時代に、このことを実感しました。
以前も書きましたが私が運営していたネットショップは女性用のプチプラジュエリーの専門店でした。この客単価1万円の商品群で構成していたショップを、思い切って3万円前後の商品中心に切り替えたのです。毎週金曜日の夜に20商品ほど新作を出していたのですが、3万円前後の商品を「限定数」で販売すれば、いくらかのお客様がついてきてくれるのではないかと思ったのです。
ところが結果はまったく逆でした。既存のお客様は3万円の商品には手を伸ばさず、客単価は上がらず、受注件数(注文件数・コンバージョン数)が大きく下がり、売上全体が下がってしまったのです。やはり、このネットショップの顧客層は「客単価1万円の商品を購入してくれる」顧客層だったのです。いきなり客単価3万円のショップに切り替えても、お客様は戸惑います。この経験からも、短期的に客単価を大きく上げることがどれほど難しいかが分かりました。
*データを見ながら地道に改善しよう
では、客単価はまったく動かせないのかというと、そうでもありません。現実的には30%〜40%程度の改善であれば、仕組みを設計することで可能なケースもあります。たとえば、人気商品のちょっと良いバージョン(素材違い、限定カラーなど)を用意するアップセル、関連商品を一緒に提案するクロスセル、また送料無料ラインを引き上げることで、まとめ買いを促す方法、あるいは定期購入を仕組み化することで、1回あたりの購買額を高めるなどの手法があります。
こうした工夫によって、5,000円のショップが7,000円程度まで客単価を上げられることは十分にあり得ます。ただし、もしそれ以上の客単価アップを目指すのであれば、お客様を入れ替える覚悟が必要です。
客単価は「一気に上げる数字」ではなく、「構造を理解して、自然に上がる仕組みを作る数字」と捉えるのが正解です。30%〜40%という現実的な改善幅を前提に、セット売りやアップセル・クロスセルの仕組みを整える。これがECにおいての現実的な客単価のアプローチです。
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