ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

1の世界と2の世界から考える、現代マーケティングのヒント【no.2255】

 現代のマーケティングを考える上で、ひとつ重要なヒントになりそうな考え方に気がつきました。「1の世界」と「2の世界」という視点です。どこかで聞いたことがある言葉、ではないでしょうか。

 この「1の世界/2の世界」という言葉、テレビ番組『水曜日のダウンタウン』の人気企画「名探偵津田」の中で使われている表現です。津田さんは「番組が仕込んだミステリーの世界」を「1の世界」、その企画を外側から見ている「現実世界」を「2の世界」と呼んでいます。津田さんが、その両方を理解し行き来する存在であることが、企画の面白さを強くしています。

 一見すると単なるバラエティ的な言い回しなのですが、実はこの「1の世界/2の世界」という構造こそ、現代人の行動や価値観、ひいてはマーケティングを理解するための大きなヒントになるのではないかと感じるのです。

*現代人は「1の世界」も生きている

 まず理解したいのは、現代人は「2の世界」だけを生きていないということです。仕事、家庭、社会的立場といった現実世界(2の世界)を生きながら、現代人は同時に複数の「1の世界」を生きています。趣味、推し活、オンラインコミュニティ、SNS上の関係性など、現実とは地続きではありませんが、本人にとっては完全なリアルの世界なのです。

 たとえば、アイドルの「推し活」に多くのお金や時間を使う人がたくさんいますよね。もし人が「2の世界」だけを生きている存在であれば、収入や社会的立場と比例した行動しかしないはずです。しかし実際には、現実世界での制約とは別のロジックで動く消費や行動が「推し活」という形で日常的に起きているわけです。これは、人が「2の世界」とともに「別の世界=1の世界」を並行して生きているからだと考えると腑に落ちます。

*同じ人間が複数の世界を並行している

 この構造をわかりやすく示しているのが、SNSの「専用アカウント」の存在です。私自身も通っているスポーツジム専用のX(旧Twitter)アカウントを持っています。そのアカウントでは、ジムに通っている人たちと「だけ」やり取りをし、その世界・界隈の文脈でしか通じない話をしています。仕事の話も、年齢や出身といった情報も、そこでは意味を持ちません。

 こうした専用アカウントは、まさに「1の世界」の可視化です。多くの人が複数の専用アカウントを持ち、それぞれの世界で別の自分として振る舞っている。もちろん人格が分裂しているわけではありません。そして、性格が異なるわけでもありません。同じ人間が、複数の世界を並行して生きている、ただそれだけです。

*世代による中心となる世界の違い

 さらに興味深いことに、世代によって「1の世界」と「2の世界」の位置づけが逆転しているケースがあるように感じます。インターネットが普及する前から生きてきた私のような世代にとっては、現実世界が「2の世界」であり、その上に「1の世界」が乗っている感覚です。ところが一方で、生まれたときからネットやSNSがあった世代の中には、仕事や職場といったものを「1の世界」として捉える人もいます。

 たとえば、「仕事の場で年齢や出身を聞くこと」は、「2の世界」の人間にとっては「自然なアイスブレイク」です。しかし仕事や職場を「1の世界」と捉える人にとっては「自分の境界を踏み越えられた感覚」と感じます。これは単なるマナーの問題ではなく、「どの世界を生きているか」の前提が違うことから生まれているのではないでしょうか。

*まずは現代人の特徴を理解すること

 この構造を理解しないままマーケティングを行うと、当然ながらズレが生じるわけです。「2の世界」の論理で「1の世界」に語りかけても、反応は得られません。逆もまた然りです。現代マーケティングの難しさは、単に手法が増えたことではなく、「人が複数の世界を生きている」という前提を持たずに語ると、そもそもマーケティング自体が届かない可能性がある点にあります。

 まず重要なのは、ひとりの人間が複数の世界を同時に生きているという構造を理解すること。その上で、「今、どの世界に向けて話しているのか」を意識すること。そしてそれを感覚ではなく言語で揃えられているか、チームで共有できているか。私自身も整理しきれていない部分もありますが、現代人の行動や消費を読み解くための、非常に重要な糸口になるのではないでしょうか。

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    ishida

    石田 麻琴 / コンサルタント

    株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから