ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

「値引き」することで起こることと起こらないこと【no.1533】

(2018年2月のコラムです)

今日は「セールを重ねて続けていくこと」について考えていきたい。

*「値引き」は芸のない戦略だけれども・・

1月になるとアパレル商材のセール期間が始まる。そのシーズンの気候にもよるだろうけれども、11月の下旬からセール企画をスタートするネットショップもある。セールとは「値引き」である。単なる「値引き」はあまり芸のない戦略だけれども、ことアパレルの市場に限っては「セール(バーゲン)があることが普通」になってしまっているから致し方ない部分もある。

以前ネットショップ運営者をやっていたころはファッションジャンルの商材を扱っていたし、いまもファッションジャンルの顧問先があるのでアパレルの在庫の大変さはよくわかる。ひとつのアイテムに対して複数のサイズ・複数のカラーで在庫を揃えなければいけないし、在庫もある程度ロットで仕入れ(製造)しなければいけない。

おまけに売れ残ったとして翌シーズンのトレンドにマッチするかわからない。年間やシーズンの定番アイテムならともかくとして、トレンドに合わなければ完全な死に在庫になる。もちろんシーズンが到来するまで倉庫に入れておかなければいけないから保管料もかかる。とにかく「値引き」してでも売らないと、次の原資がなくなってしまう。

*「値引き」重ねることで起こる弊害

最初は定価で売っていた商品を、キャンペーン的に10パーセント20パーセントオフにし、次に30パーセントオフにする。段階的に商品の値段を下げていき、最後は50パーセントから80パーセント。最終的にはタイムセールなども加えて定価の90パーセント近くで販売する。ネットショップだけではなく、アパレルの実店舗でもみられる戦略なのだけれど、この選択をするときに気になるのが「ブランドの棄損」と「買い控え」になる。

まず「ブランドの棄損」なのだが、こちらはシンプルに「断続的な値引き」の戦略をとらない。「値引き」をすることは稀で、「値引き」をしたとしても在庫になっているすべての商品ではなく、ショップ内の一部の商品に限られる。また「値引き」をおこなったとしても理由のない値引きはしない。年明けのバーゲンの一度きりが多いのではないだろうか。

このあたりの「ブランド」の在庫管理がどうなっているのかは興味があるのだが、ひとつ言えるのは「ブランドの商品」はそれだけ元々の利益率が高いということだろう。利益率が高いからこそ多少在庫を残しても利益が残るし、むやみな「値引き」をせずにブランドを棄損することもないわけだ。

*「買い控え」は果たして本当に起こるのか

「買い控え」はご存知のとおり、先のキャンペーンなどを予想して商品を買わないでおくこと。「値引き」を断続的におこなうことで「買い控え」が起こると考えられる。たしかにショッピングモールの販促企画の前には「買い控え」が起こる。ただ、それはいつ販促企画がスタートするのかが事前にわかっているから起こっているともいえる。

ショップ主導の「値引き」には「買い控え」が起きないともいえる。これは同じシーズンの同じタイミングでふたつを同時にテストできないことのジレンマがあるのであくまで想定になる。

まずお客様は「値引き」のタイミングもどれだけ値引かれるのかも事前にはわからない。またさらなる値引きを狙って「買い控え」をおこなったとしても、お目当ての商品の在庫がなくなってしまう可能性があるから控え続けるわけにもいかない。お客様は「値引かれた金額」と「商品力」と「自分の趣味嗜好」のバランスをみて商品を購入していく。だから「買い控え」には繋がらないという考え方だ。

実際に体験したら悲しいのは「MAXの値引き」になってから売れまくるパターンで、その場合はお客様にとっての「商品力」が残念ながらそこまでだったということかもしれない。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。