著者:石田 麻琴

メーカーが直販をやるときの常識と非常識【no.1639】

 ちょっと「うーん、そういうことアリなのかなぁ」と思ったことがあったので、意を決してってほどじゃないけれど書きたいと思います。

 メーカーの直販Eコマースサイトの立ち上げについて、ですね。

*小売りに出している商品を値引きして売る

 少し困った話がECMJのクライアントさんから上がってきました。ショッピングモールに大手メーカーがネットショップを立ち上げ、しかも小売りの販売価格よりも安い値段で商品を販売している、というのです。問屋さんを通して商品を卸している小売りのネットショップには販売価格を守らせておきながら、自社のネットショップでは全く同じ商品を値引きして販売しています。ショッピングモールでの出店ですから、当然のことながら同じ商品同士価格は比較されます。メーカー有利なのは明白です。

 しかもタチが悪いことに、というか少々カッコ悪いことに、このメーカーさんは大手の食品メーカーなのです。名前を聞いたら誰しもが知っているようなところです。非上場企業なので売上高は公開されていませんが年商で数百億円という規模のメーカーです。インターネットならず、スーパーやコンビニにいけばどこでも商品が販売されています。

*小売りの信用をなくしてまで出店する理由は

 そんな会社がいまさらショッピングモールに直販Eコマースサイトを出店して何がしたいのでしょうか。ショッピングモールに出店しても年商数十億にはなりません。おそらく市場規模と商材を考えれば良くて年商5億円以下、年商3億円程度が適当なところかなと思います。おまけにシステム利用料などのコストもかかりますから、利益も大きくは残らないはずです。なぜ(母体に比べて)微々たる売上のため、微々たる利益のためにネットショップを出店したのか、不明です。

 仮に年商5億円でもインターネット上の需要から回収したかったとしましょう。また社内のネットに興味がある若手が腕試しやマーケティングの一環としてショッピングモールにEコマースサイトをオープンさせたのかもしれません。でも、ショッピングモールにはメーカーの商品を仕入れて販売している小売りのネットショップがたくさんいます。なぜ今まで商品を頑張って売っていた小売り店舗の信用を失うような行為をするのか、不明です。

*メーカーが直販のネットショップをやるときの常識

 世の中にはやっていいことと悪いことがあります。やれるけどやっちゃいけないこともあります。人の信用を失うことや不義理を働くことはやってはいけないことに入りますよね。今後の付き合いを考えない、今後の批判を考えないならばやってもいいのかもしれませんが、総スカンの可能性・炎上の可能性も覚悟しなければいけません。

 メーカーがEコマースを活用して直販をおこなうケースは多々あります。現在のEコマースの主流のひとつかもしれません。ただ直販のサイトでは他社には出していない自社オリジナルの商品を中心に展開したり、卸している商品を販売していたとしても小売りにお願いしている販売価格を崩さないのが常識的です。小売りに設定している販売価格を割るなんてのはもっての他です。

 百歩譲って中小企業のメーカーならわかります。大手の下請けメーカーとして「BtoB事業をこれ以上続けていくのにはリスクがある、ただいきなりBtoCには切り替えられない」という場合です。BtoBからBtoCへの過渡期として別会社を立てコッソリ動くのは仕方がないことかもしれません。しかし大手メーカーとなると話は別です。今回の件で大手メーカーが直販Eコマースサイトを出店した意図は正直わかりません。ただ、結果としてリターンよりもリスクの方が大きいと思うんだけどなー。