ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

なぜ我々はメールでアプローチを仕掛けてしまうのか【no.1652】

 先日、とある勉強会で講師を務めさせてもらう機会がありました。そこでいただいた質問で会心の一撃みたいな良い問いがあったので共有したいと思います。と、その前にどんな内容を話したか、から。

 テーマは自由、事前の準備も特に必要なし、20分程度その後のディスカッションのためのネタになるようなことを話してくれれば大丈夫ということで引き受けたのですが、しっかりスクリーンの準備とかされていて少し焦りました。ただ、ワードに「話したいこと」をメモ程度に書いておいただけなので、特にスクリーンは使わずに口答で。

 タイトルは「デジタルマーケティングのホントのトコロ」。いいことを話すようで悪いようなことを話すような題名なので少し心配されてしまっていたようなのですが、デジタルマーケティングについて最近知ったこと学んだこと、そして思ったことだったり気づきだったり、デジタルマーケティングを導入(というか、会社をデジタルマーケティング化する)ための本質的な課題についてもお話ししました。

 その中で今年、JDMC(日本データマネジメント・コンソーシアム)のマーケティングシステム活用研究会でMA(マーケティング・オートメーション)のシステムの活用を実機を使っておこなうのですが、MAって結局はユーザーの元にいくのはメールで、メール配信の効率化・高確度化みたいなところなんですよね、みたいな話をしました。最近思ったことのひとつとして。

 実際にユーザーの方と接触する機会や手段は現状メール配信しかないので、MAを否定しているわけではないんですよ。でも他にないのかと。MAってそもそも「ユーザーはある程度定期的にメールボックスを空けていて、メールの件名を(一覧を一瞬でも)確認している」ってことを前提にして成り立っているシステムじゃないですか。MAを使ってもメールボックスの中でメールがポップアップで出てくるとか件名が拡大するとか、メール自身が目立てるわけじゃなくてあくまでネット企業のルール上での戦いになっているところがなんとも言えないと。

 まあこれを話したのは前半部分でしたし全体の要旨でもそれほどなかったのですが20分後に話し終えての最初の質問で良い問いをいただきました。「メールではなく(BtoBというよりBtoCであれば)LINEとか他の情報発信手段があるのに、なぜメールが多いんですかね」という質問でした。確かに、MAは基本的にメール配信するためのツールで、その裏側に顧客データだったりスコアリングだったりシナリオというものが隠れています。

 そもそも自分たち(勉強会の参加者は皆30代以上、40代後半が中心だった)よりも下の世代ではメールは使われないツールになりつつあるのに、なぜメール配信なのだろうか。という話です。

 私がこたえたのは「自分たちがメールを活用している世代で育っているから」でした。つまり自分たちのもっとも身近にあるツールがメールなのでマーケティングアプローチとしてもメールの優先順位を高くしてしまっているのではないかということです。正しいのか正しくないのかはわかりません。ただ、情報発信のマーケティングアプローチもやっぱり自分たちが「習慣になっている」ツールに自然に依存してしまっている、という考え方はたしかにありそうです。

 以前のECMJコラムで「ビジネスは自分と同じか年上を対象顧客にしないと成功しない」という話を書きました。年下の世代は我々とはまったく違う世界を生きており、LINEとかInstagramとかツールを合わせたとしても、どうやってもリズムは合わないものなのです。昔、自分たちが若い頃に母親や父親が流行りのツールを使うと「なんか微妙に使い方違う・・」と感じたのと一緒です。細部のニュアンスは「同じ世界を生きている」人間にしかわかりません。

 もしかしたらメール配信をマーケティングアプローチにしている時点で、我々の対象顧客は限られてしまっているのかもしれませんね。勉強会の場にいた30代、40代、50代のメンバーの多くが「はっ」とした質問でした。

カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 7.Eコマースのひと工夫

ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。