著者:石田 麻琴

市場環境の変化。「ピンチをチャンス」に変える考え方【no.1669】

 「ピンチはチャンス」という言葉があります。

 ピンチの中にはチャンスが潜んでいるという意味なのか、ピンチをチャンスだと捉えるポジティブな思考性が大事という意味なのか、両方ともあるのでしょうが、いまの中小企業のEコマースの市場環境を考えると「ピンチ」であることは間違いないのではないかと思います。

*「あなたの会社だけ」に起こっていることはひとつもない

 ショッピングモールのルール変更、配送業者の値上げ、Amazonの台頭、広告の費用対効果の悪化などなど、この数か月のEコマース業界に様々な変化が起きています。中小企業でEコマースを運営している事業者だけではなく、大企業のEコマース事業にも影響が出るような市場環境の変化が起こっています。正直、「このままインターネットを続けていても」と思っている経営者の方もいるのではないでしょうか。

 ただ、いずれの市場環境の変化も「あなたの会社だけ」に起こっていることではありません。ショッピングモールのルール変更も配送業者の値上げもAmazonの台頭も広告の費用対効果の悪化も、その影響に多少の大小はあるにせよ「どの会社にも」起こっている市場環境の変化です。

*中小企業にとって需要は無限大のようなもの

 今回の市場環境の変化は「ネットを辞めてしまってもいいかも」と思うような事業者が出かねません。特に年末から年度末にかけて、インターネットを辞めてしまう事業者が多く出てくる可能性があります。厳密にいえば「辞める」というより「放置する」の方が表現として正しいかもしれません。力を入れないことにする、予算を割かないようにする、改善を加えないようにする。いずれにせよ「ネット経由での売上増は期待しない」という経営判断です。

 Eコマース事業者の99.999%はトヨタ自動車のような大企業ではありません。トヨタ自動車のような会社であれば需要の減は数字に大きく影響しますが、中小企業は需要の減を気にしても仕方がありません。極論を言えば、中小企業にとって需要は無限大のようなものです。競合他社の需要を取ってこれるならば、いくらでも需要は存在します。「ネットを辞める」という判断をするような事業者が出てくるような変化は、需要と供給のバランスを考えたとき、むしろ好都合になるのです。

*市場環境の変化が起こると「お客様」が動き出す

 ピンチは「あなたの会社だけ」に起こっていることではなく、先に書いたとおり「どの会社にも」起こっている市場環境の変化です。「ネットを辞める」判断をした事業者が出ると、そのネットショップについていたお客様が他のネットショップを探し出します。配送料金の値上げをネットショップの送料に反映させると、「他のネットショップで安いところないかしら」とお客様が同じように他のネットショップを探しだします。

 ピンチが起こったとき、「動き出す」のは事業者側だけではないということです。お客様の側にとっても「他のネットショップ」に目を向ける機会になります。だから「ピンチはチャンス」になりえるのです。人間はルーチンが大好きです。普段のルーチンをわざわざ変えることはありません。でも市場環境の変化を感じたら、「他はどうなのだろう」とルーチンを壊して動き出します。今回のピンチは、新しいお客様に自社のネットショップを知ってもらうためのチャンスだと言えるのです。

*辞めるなら「いま」、加速させるのも「いま」

 市場環境が悪化し、ピンチだからとただ頭を抱えて、手を入れるのを辞めてしまうか。それとも、「ピンチをチャンス」に変えるために、市場と競合の動きをチェックし、積極的に改善を加えていくのか。辞めるなら「いま」、加速させるのも「いま」なのかもしれません。もっとも中小企業にとって「ネットを辞める」という選択は、「自分の代で事業を終わらせる」に等しいことかもしれませんが。