ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

新作商品の商品力を測るには「初速」を見逃さないようにしよう【no.1859】

 前回のECMJコラムで「初速」の話をしました。

 新作商品を「ヒットする可能性があるか」判断する上で、販売開始時の「初速」を判断材料にするという話です。今回のECMJコラムは、この「初速」の話なのですが、こんなエピソードを聞いたことがあります。

 ここではあえて名前を伏せますが、日本でもっとも有名なアパレル店舗となった某ブランドがあります。この某ブランドはこれまでいくつかの大ヒット商品(というより、メガヒット商品)を発売しており、そのメガヒット商品が自社のブランドを確立する上で重要な役割をはたしてきたわけですが、この某ブランドが、なぜメガヒット商品をメガヒット商品にすることができたのか、というエピソードです。

 このブランドが最初に世に知れわたることになったのは、フリースという商品のメガヒットでした。もうこの某ブランドがどの会社さんかわかりましたよね。このフリースという商品、年間2,600万枚も売るほどのメガヒット商品に成長したのですが、メガヒットの芽は前年から感じとることができていたそうです。

 それは発売時の「初速」です。フリースは季節性のある商品ですから、フリースの発売が始まってからの販売数の伸び、生産数と在庫の減り具合をみていたということなのです。年間2,600万枚を販売したのが2000年。その前年の1999年は850万枚を販売しています。さらに前年の1998年は200万枚です。

 季節性のある商品であることを考えれば、「在庫が減ってきたら次を発注し、また在庫が減ってきたらその次を発注する」という流れでワンシーズンに2,600万枚を販売することはできません。ということは、2,600万枚のうちのいくらかをシーズン前に発注&在庫していたということです。これが「初速」からメガヒット商品の裏付けを感じていたということなのです。

 不思議なものなのですが、「ヒット商品」になるものはなぜか「初速」がつきます。つまり、お客様の反応が思った以上のスピードでやってきます。私がEコマース事業者としてネットショップを運営していたときの話をします。

 ECMJコラムで何度か書いているのでご存じの方もいると思いますが、ネットショップの運営者時代、Yahoo!ショッピングでジュエリーを販売していました。ピアスやネックレス、リング(指輪)などです。最初の数か月はジュエリーのみを販売していたのですが、バッグを販売することになりました。女性もののハンドバッグとショルダーバッグです。

 ネットショップに商品を登録したその瞬間から不思議なことが起きました。いま登録をしたばかりの商品に注文が入ってくるのです。商品を登録したばかりですから、トップページで紹介しているわけでも、メールマガジンで紹介しているわけでもありません。なぜか、登録した商品が売れるのです。お客様がどこでこの商品を見つけたのかは全く不明です。この商品が毎月3,000コ売れるヒット商品になり、ネットショップの成長の大きな支えになったのは言うまでもありません。

 いま振り返ると「ヒットする商品は『初速』から違う」ということなのですが、当時は意味がわからず、とにかく足りない在庫を足すことで必死でした。「売れる商品」が発売されると、どこからともなくお客様がやってきて、商品を買っていってくれるのです。それは販売している私たちでもわからないところからやってきます。この「初速」を見逃さないことが大切です。

 人間の直感は実はほとんどの場合正しく、「これは何かがあるぞ」と感じた場合には必ず何かがあります。新しい商品を発売した場合、「初速」を見逃さないこと。「初速」の比較をするだけで、商品のもつ「本当の商品力」を測ることができます。もしかしたらヒット商品の芽は、すでに自社に隠れているかもしれません。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。