ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ITシステムにバックオフィス業務を合わせる【no.1864】

 先日、ECMJのクライアント様のミーティングでこんな話があがった。

 Eコマース事業の規模が大きくなってきて、一括で受注処理をすることが必要になってきた。ネットショップ自体を複数のチャネルで運営しているため、在庫管理についても一括で管理できる仕組みが必要になってきた。つまり、Eコマース事業の拡大によってバックオフィスの「仕組み化」が必要になってきたわけだ。

 ただ、社内的にシステムを導入しづらい理由もある。ひとつはエクセルのように「数字データ」だけではない「文字データ」が残せないこと。既存の受注管理ではお客様の細かい要望や発送の際に注意するポイントなどをスプレッドシートに備考として文字でメモしており、システムを導入すると、この「文字」を残せなくなるのが困ってしまうというのだ。

 他にもシステムを導入しづらい理由がある。ネットショップの販売方法として、個別での商品登録の他に、セット商品の商品登録をおこなっている。セット商品の在庫管理に関してはシステム内で処理することができず、個別対応でエクセル管理をする方がスムーズなのだ。もちろんシステムをカスタマイズすることで解決する課題なのではあるが、コストバランスを考えると現実的ではない。

 こういった悩みを抱えているEコマース事業者の方は実は多いのではないだろうか。ECMJに相談いただく会社さんでも、「売上が伸びないことが課題」という会社さんだけではなく「売上はあるが、管理しきれていないのが課題」という会社さんも結構ある。ただ、そういった会社さんは「大きな機会損失」をしてしまっているわけで、バックオフィスを効率化・システム化・外注化することでマーケティングに使う時間を増やすことができ、さらなる事業の拡大を実現することができる。

 この「バックオフィスのシステム化」というのはEコマース事業の成長を継続させる上でキーポイントのひとつになるのだが、先にも書いたとおり「システム化によって実現できなくなること」があり、それは仕方がないものとして「システムを活用した新しい価値」を探していくという発想の転換が必要になるわけだ。

 すべてのお客様に個別対応を実現できるうちはある意味サービスレベルは最高であり、システム化によって「捨てなければいけない個別対応」が生まれるとサービスレベルが大きく下がってしまうような不安を覚える。ただ逆に考えれば、個別対応は「ITシステムを導入していない状態」での「業務システム」であり、ITシステムを導入するということはITシステムに合わせた業務システムが必要になるということである。

 残念ながら個別対応時代に提供していたサービスをすべて管理・実現できるようなシステムはない。Eコマース事業を拡大していくためにはどこかのタイミングでバックオフィス業務にシステムを導入し、ある意味「システムに合わせたサービス」に再設計していく必要がある。その分、きめ細かいサービスは失われるかもしれないが、次のサービスを考えるためによりリソースを割けるようになる。現場のスタッフにとって非常にストレスな選択になるのだが「破壊と創造」という表現になるのかも?

 本当にもったいない会社さんだと、「1日のほとんどの時間が受注処理、発送処理、お客様の問い合わせ処理で終わってしまっている」というところがあり、こういった会社さんがバックオフィス系の通常業務の見直しをおこなうと、その効果は計り知れない。バックオフィス業務の効率が上がるだけではなく、ここまで書いたとおり、最終的にはEコマース事業の売上につながってくるわけだ。

 Eコマース事業の成長のためには「システムに業務を合わせる」必要がある。ここに柔軟性をもって取り組んで欲しい。(いままでの業務にこだわりがあって、変に変えられなかったりするんですよね)

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。