ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

コンサルタントが教える!Eコマース成長の法則。29【no.1917】

(こちらは2021年公開のコラムです)

 前回コラム(no.1916)のつづきです。

 「コンサルタントが教える!Eコマース成長の法則」というテーマで連載をしています。前回は、「多店舗展開の考え方」についてご紹介しました。今回は「多店舗展開の運用コスト」についてお話します。

 前回のコラムでも書いたとおり、Eコマース事業の成長の中で「多店舗展開」がひとつの課題になってきます。これはすべての企業、ではありません。一部の自社サイトでのみ運営することが可能なネットショップについては多店舗展開の必要はありません。多店舗展開の必要性が「お客様の選択の広さ」にあるとすれば、その理由はつかみやすいのではないでしょうか。

 もはやEコマースを楽しむありとあらゆるお客様がインターネットの複数のサイトやアプリを使って情報を取得したり、商品を探したりしている時代です。お客様の選択肢にネットショップの側も合わせなければ、それだけお客様に知ってもらう機会、選んでもらう機会が減ってしまいます。多くのネットショップはここを狙っていかざるを得ません。逆に自社サイト一本で戦えるのは「お客様の側から寄ってきてくれる」強いブランド力があるネットショップ、もしくは時間をかけて強いブランド力を目指すネットショップということになります。

 多店舗展開を進める上でポイントになるのが「運用コスト」です。これが今回のコラムのテーマです。多店舗展開を進めるためにはふたつのコストを認識する必要があります。

 ひとつは、ネットショップの出店のコストです。たとえばこれまでの楽天市場に出店していたネットショップの他に、自社サイトを開設する、Yahoo!ショッピングに出店する、Amazonに出品する、その他のショッピングモールに出店する。金額の大小、ロイヤルティの大小があれど、金額的な新しいコストを支払うことになります。これまで無料のツールで出店をおこなっていた事業者の皆さんならば、楽天市場の出店費に二の足を踏んでしまうかもしれません。

 もうひとつは、ネットショップの運用のコストです。多店舗展開をおこなうと、ネットショップの更新作業が単純に倍になります。商品ページの登録や登録在庫の確認作業などの仕事を販売チャネル毎におこなわなくてはいけません。また受注の作業も倍になります。多店舗展開をした各々のネットショップの管理画面に入って受注処理をおこなうことになります。多店舗展開に取り組む上でポイントになるのが、この運用のコストです。つまり、固定費です。

 そのため、多店舗展開の戦略と同時に検討したいのが在庫管理システムや受注管理システムの導入です。いまでは商品ページの更新作業や在庫数の更新、受注管理が一括管理できるシステムが多数存在します。このシステムの活用が多店舗展開の運用コストを下げる役割を果たしてくれます。当然、エクセルやアクセスなどを活用して自社内で運用コストを減らす工夫をすることも大事ではありますが、ある程度受注数がまとまってきた遠くない未来にはいずれにせよシステムの導入が必要不可欠になります。多店舗展開とシステムの導入はセットで考えた方が良いかもしれません。

 多店舗展開をすると起こりやすいのが、「ネットショップを立ち上げたけれど何も手を入れない」店舗ができてしまうことです。また、Eコマース事業をおこなう上で売上の軸になっている「本体」のサイトがあると思います。この本体のサイトにかける時間が減ってしまうのも考えものです。売上をあげるためのマーケティングに使う時間を増やすためにも多店舗展開の「運用コスト」についてはしっかり考えていきましょう。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。