著者:石田 麻琴

まず「KPI設定」をしてから細かいデータ分析を進める【no.1991】

 昨今のDXに対する意識向上から「KPIの設定」について相談される機会が増えてきました。

 コロナ禍以降、対面での営業活動が難しくなり、DXの特にマーケティング方面ではデジタルマーケティングのニーズがより強まっています。その中で、経営数値や日々の業務の成果を可視化・ビジュアル化し、それをもとにデータドリブンのマーケティングを展開していくための「BI(ビジネスインテリジェント)ツール」の再定義が多くの企業で同時多発的に起こっているんですね。

 数年前のBIツールの盛り上がりはあくまで新しいモノに対する期待値トレンドであって、コロナ禍以降の1年半を経て、DX意識からのBIツール活用にスポットが当たっており、その流れで「KPIの設定」のニーズが高まっていると。ちなみにもう5年ほど前のことでしょうか、海外事情に詳しい友人が「石田さん、いまアメリカではKPI設定の仕事がトレンドになっているらしいですよ」と情報をくれたのですが、デジタルの世界でも「アメリカのトレンド→数年後日本のトレンド」みたいな流れなんですね。

 というわけで、今回は「KPI設定」の話です。

 KPI設定の相談をいただいた企業さんのBIツールのダッシュボードを見てみると、様々なデータ分析のグラフがずらーっと並んでいることがあります。データ分析というと様々なデータを多面的に見て、そこから何かしらのインサイトを見つけ出す、というイメージがあります。また、様々なデータグラフがあった方がどこか「分析している感」があるんですよね。なのでその気持ちはわからないこともないのですが、ことKPI設定という視点でいえば、確認するグラフが少なければ少ないほど良いわけです。

 ご存じのとおりKPIとは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」という言葉の略であって、「成果(Eコマースの多くの場合は売上)を達成するための重要指標」であるわけですから、その重要指標がめちゃくちゃたくさんあっては困るわけですね。極端にいえば、本当に理想的なKPIは「今日お客様のところを100件回れ」なわけです。100件回ればそれなりの売上になり、それなりの利益が残ると計算できているわけですから。まあ、これはリアルの営業の場合ですが。

 まず理解しておきたいことは、KPIの設定をしていないにも関わらずデータ分析としてデータを多面的に見るグラフを作りまくるのは間違っている、ということですね。あくまで上流にはKPIがあり、そのKPIの動きについて細かく分析するために多面的なデータ分析があるわけです。

 さて、KPI設定の話に戻りますが、Eコマースでいうと重要なKPIとして「アクセス数(セッション数)」「転換率(コンバージョン率)」「客単価」という3つがあります。またビジネスモデルによっては、「リピート数(率)」「会員数」「広告費率」などをKPIにあげている事業者の方もいると思います。これらのKPIは「結果KPI」と呼ばれるもので、「何かのアクション(行動)をした結果」として生まれるものです。なので、これら「結果KPI」の下にアクションが入ることになります。

 アクションの中でも数値で測れるものがあります。前述した「今日お客様のところを100件回れ」みたいなものですね。Eコマース事業でいうと「今日、このカテゴリの商品を30商品追加しよう」だったり「今週50万円分のPPC広告をかけよう(CPA5,000円で)」だったりでしょうか。これらを結果KPIに対しての「アクションKPI」と呼びます。

 もちろん「ECサイトのデザインを変更する」というアクションは「アクションKPI」で測れないものなのですが、アクションは「アクションKPI」で測れるものの方がわかりやすく、行動につながりやすいものになります。そして、「アクションKPI」で測れると「結果KPI」での判断もしやすくなりますよね。「ECサイトのデザインを変更する」は「結果KPI」でも判断がなかなか難しいのです。

 KPIの設定を考えるとき、「結果KPI」と「アクションKPI」の違い、「結果KPI」を設定してからそこに紐づく細かいグラフ(ビュー)を作成すること、このふたつを頭に入れておいてください。